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【はたらくいきもの】祭り支えて 黙々牛歩 牛車(京都市)

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【はたらくいきもの】祭り支えて 黙々牛歩 牛車(京都市)

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時代祭を控え、山深い洛北の地で訓練に励む牛の春子 =京都市北区(恵守乾撮影) 時代祭を控え、山深い洛北の地で訓練に励む牛の春子 =京都市北区(恵守乾撮影)キヤノン EOS 6D:EF24-105mm F4L IS USM
人々に時代絵巻を堪能させ、平安神宮に到着した牛車 =京都市左京区(恵守乾撮影)
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人々に時代絵巻を堪能させ、平安神宮に到着した牛車 =京都市左京区(恵守乾撮影)キヤノン EOS-1D X Mark Ⅱ:EF70-200mm F4L USMフルスクリーンで見る 閉じる

 京の秋を彩る時代祭。京都三大祭の一つで、平安時代から明治維新まで、各時代の装束をまとった行列が、秋の都大路を練り歩く豪華な“歴史絵巻”。京都御所を出発し、平安神宮に向かう列には、当時をしのぶ馬車や牛車(ぎっしゃ)が欠かせない。人々に、みやびな気分を味わわせてくれる牛車を引くのは訓練を積んだベテランの牛たちだ。(写真報道局 恵守乾)

出発前の京都御所では観光客の人気者になっていた =京都市上京区(恵守乾撮影)
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出発前の京都御所では観光客の人気者になっていた =京都市上京区(恵守乾撮影)キヤノン EOS 6D Mark Ⅱ:EF24-105mm F4L IS USMフルスクリーンで見る 閉じる

 牛たちが暮らすのは、京都市北区にある「京都岸本乗馬センター大森厩舎(きゅうしゃ)」。映画撮影や祭事用の馬とともに、時代祭や葵祭などで牛車を引く春子、夏子、秋子、冬子の4頭が飼われている。時代祭には春子と冬子の2頭が参加した。

訓練を終えた春子を手入れする岸本学さん。春子が首を傾けるのは気持ちよさの表れという =京都市北区(恵守乾撮影)
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訓練を終えた春子を手入れする岸本学さん。春子が首を傾けるのは気持ちよさの表れという =京都市北区(恵守乾撮影)キヤノン EOS 6D Mark Ⅱ:EF24-105mm F4L IS USMフルスクリーンで見る 閉じる

 乗馬センターのスタッフ、岸本学さん(44)は、「かつて祭りに使用する牛は畜産業者や農家が用意していた。しかし、訓練を積んだ牛も時期が来れば出荷されるため、働きが安定する牛の確保が難しかった」という。

 もったいないと感じた岸本さんらが、祭事用の牛を飼い始めたのは7年前。馬に関してはエキスパートの岸本さんだが、牛を扱うのは初めてといい、「牛は馬ほど表情がなく、最初は状態が分かりにくかった。エサを与えたときの食べ方や歩き方など世話をするうちに牛の状態が分かるようになった」と話す。

時代祭に向け、訓練で荷車を引く牛 =京都市北区(恵守乾撮影)=京都市上京区
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時代祭に向け、訓練で荷車を引く牛 =京都市北区(恵守乾撮影)=京都市上京区フルスクリーンで見る 閉じる

 祭りが近づくと、ブレーキで負荷をかけた荷車を引かせ、厩舎周辺の道を歩くトレーニングを行う。外に出て車の音や人の声に慣らすのが目的だ。週2回の訓練で本番に備える。

 青空が広がった10月22日の時代祭当日、牛車を担当する同センタースタッフの久保田光男さん(44)は春子と冬子の仕上がりに自信を見せた。

時代祭に向け訓練で荷車を引く牛 =京都市北区(恵守乾撮影)=京都市上京区
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時代祭に向け訓練で荷車を引く牛 =京都市北区(恵守乾撮影)=京都市上京区フルスクリーンで見る 閉じる

 平安神宮を出発し京都御所へ向かう神幸列(しんこうれつ)を冬子が引き、御所を出発する時代行列を春子が引く。

 ミシミシと音を立て、秋の都大路を牛車が進む。普段見る機会の少ない牛車の姿に、沿道の観客から歓声が上がり、カメラやスマホが向けられる。

時代祭当日、都大路を進む牛車 =10月22日、京都市中京区(恵守乾撮影)
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時代祭当日、都大路を進む牛車 =10月22日、京都市中京区(恵守乾撮影)キヤノン EOS 6D Mark Ⅱ:EF24-105mm F4L IS USMフルスクリーンで見る 閉じる

 午後3時前、牛車は平安神宮に到着。冬子と春子は長い道中をトラブルなく無事に役目を果たした。

 「お疲れさん」。ねぎらいの言葉をかけながら久保田さんが牛の装飾を外す。牛たちの今年の仕事はこれで終了。長い冬休みにゆっくり体調を整え、来年の春には、また堂々とした姿を見せてくれるだろう。

 ■時代祭 5月の葵祭、7月の祇園祭と並ぶ京都三大祭の一つ。平安遷都1100年を記念して明治28年に始まった。時代行列では歴史上の人物に扮(ふん)した約2000人が京都御所から平安神宮までの4.5キロを練り歩く。毎年10月22日の開催だが、来年は同日に「即位礼正殿の儀」が行われるため、10月26日に変更される。

企画制作:産経デジタル