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勇壮な火祭り「お燈祭り」 毎年2月6日に開催【白洲信哉「旅と美」360°パノラマ】

伝統・文化

勇壮な火祭り「お燈祭り」 毎年2月6日に開催【白洲信哉「旅と美」360°パノラマ】

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勇壮な火祭り「お燈祭り」 毎年2月6日に開催【白洲信哉「旅と美」360°パノラマ】

 和歌山県新宮市、熊野速玉大社の旧社地と伝えられる神倉神社は、市の西北に位置する神倉山にある古社だ。頂上には、ゴトビキ岩という巨岩が熊野灘にむかって突き出している。

 毎年二月六日の夕刻、新宮市内は松明をもち、白装束に縄帯の異様な、いでたちの男たちが、どこからともなく現れる。彼らは各所にお参りをしながら、「たのもー」の声とともに松明と松明をぶつけながら練り歩き、やがて神倉山の頂上目指し登りはじめる。その数二千余り、男たちを「上り子」という。七時を過ぎる頃、速玉大社の神官がゴトビキ岩に手を合わせ、浄火が大松明に移され、神事が終わる。

 各自の松明にその火が移されると、段々と山全体が異様な雰囲気に包まれてくる。ゴトビキ岩の神域と参道をわける結界に鳥居があり、合図で扉が開けられると、松明をかざした若者たちが、急な石段を我先にと駆け下り、早さを競い合うのである。山上から麓まで、火の海と化し帯状になることから「下り龍」といわれている。

 僕は幾度となくその輪に加わった。ゴトビキ岩の隙間に白石を敷いた一段高い場所から下界を見下ろし、駆け下りずとも、火の力をかり生まれ変わったような感じと、短い時間ではあったが、「籠る」ことの意味を体現する。熊野は出雲と並ぶ代表的な「こもりく」だが、その晩は山全体が「籠る」男たちの新生した姿で埋めつくされるのである。※2017年2月6日撮影(文・パノラマ写真 白洲信哉氏)
(撮影機材:リコー THETA S )

白洲信哉(しらす・しんや) 白洲信哉(しらす・しんや)  文筆家。昭和40年生まれ、東京都出身。日本文化の普及に努め、展覧会など文化イベントの制作にも携わる。最新刊「旅する舌ごころ」(発行・誠文堂新光社)発売中。 

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