入試 入試

【子ども点描】年齢で異なる「見つけ出す力」焦らず見守って

 前回は、探究ということについて述べました。小学校から大学まで、「自分のまわりにある情報を精査して考えを形成し、問題を見出し解決策を考えること。思いや考えをもとに創造したりすることに向かう『深い学び』の重要性」についてお話しさせていただきました。今回は、探究するのにもタイプがあるかもしれないですね、ということについてお話しします。探究だからこそ、一人ひとりの個性に応じたやり方が大切かもしれません。

 子どもたちが、自分を取り巻く環境から情報を取り出す時の行動にはいくつかの個人差があります。図は、埋もれ図とよばれるものです。左の図の中に、右の図が埋もれています。どこに埋もれているでしょうか。見つけ出す図は簡単なのですが、複雑な図形の中に入ってしまうとなかなか見つけられません。

 平均的な変化をみてみますと、8歳から10歳ごろまでは、全般的に周りにある刺激に影響されて、目的とするものを見つけ出すのはあまり得意ではありません。見つけ出す力は年齢とともに増し、17歳ごろにピークとなり、その後は変化しないとされています。このような情報抽出時の特徴を知っていると、高校のころが探究にとってよいタイミングであることが理解できます。子どもの個人差を理解することの重要さはここにあるのです。

 探究の方法と関係している、もう一つの個人差があります。それは目的のものを見つけるまでの時間と正確さです。多くの方は、図形を頭の中で重ね合わせながら、何度も繰り返して確認し「ここだろう」と答えを出したのではないでしょうか。時間はかかるが答えをよく確認して反応するので、間違うことが少ないのです。

 埋もれている図が2カ所あるかもしれないということに気付かれた方もいるのではないでしょうか。もちろん、あっという間に答えを見つけた方もいるはずです。でも、答えは1カ所だと思いこんでいませんでしたか。スピードと正確さのバランスが重要で、全般的には年齢が増すにともなって慎重な方に移って行き、確実性を求めるようになります。「答えは一つではないかもしれないと思った私」「一つ見つけて安心した私」を感じられたのではないでしょうか。

 子どもの中には、情報が多すぎるとそれに圧倒されてしまうタイプや、素早く正確に答えを出せるタイプ、など課題に向き合う時の個性があります。深く学ぶ学び方に最適な一つの方法があるとは思えません。だからこそ創造的な活動が出来るのだと思います。一人ひとりの個性に応じた探究方法を考えることが大切かと思います。

 時代はスピードを求めているようですが、複雑なものの中から求めるものを見いだした時の喜びは、子どもも大人も同じではないでしょうか。小中学校の時代に形成された、自ら学ぶことの楽しさは、高校の時代にさらに深められ、大学教育や社会における発見・発明につながってゆくのだと思います。

 「短気は損気」かもしれません。ゆっくり育てることも大切ですね。

河合優年(かわい・まさとし) 大阪府岸和田市出身。武庫川女子大副学長、同大教育研究所教授・子ども発達科学研究センター長。中央教育審議会で専門委員を務めたほか、科学技術振興機構の「日本における子供の認知・行動発達に影響を与える要因の解明」グループリーダーなどを歴任した。日本発達心理学会評議員、学校心理士スーパーバイザー。