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【子ども点描】高校から大学へ 探求が導く

 今回は、小学校から大学までの教育に関係することについてお話をします。学習指導要領が新しくなり、令和2年度に小学校、3年度に中学校、そして来年度から高校の教育が変わります。学習指導要領は子どもたちを取り巻く社会環境に応じておよそ10年ごとに改訂されています。今回の改訂では、小中高を通して自ら能動的に学習するということが柱となり、探究活動が重要視されています。

 大学では、知識や技術の修得に基づいた、主体的な学びにより高等教育を展開しています。既存の科学を超えた新しい発見は、探究心から生まれるのですが、大学教育が高校と違う点はここにあります。つまり学習者自身が探究心を持ち、新しいものを作り出してゆくのです。その意味で、高校のときの教育と大学教育は少し異なるのですが、その切り替えは簡単ではなく、入学後もしばらく高校の延長のような学習態度が続く人もいます。

 今回の改訂では、学ぶことに興味や関心を持ち、見通しを持って粘り強く取り組む「主体的な学び」や、先哲の考えを手掛かりに思考を広げ深める「対話的な学び」、知識を相互に関連付けてより深く理解する「深い学び」が挙げられています。

 これを実現するために、来年度から始まる高校教育では、「理数探究基礎」や「理数探究」の科目、伝統や文化に関する教育を深める「古典探究」「日本史探究」「世界史探究」「地理探究」科目、そして「総合的な探究の時間」が導入されました。

 これらは、生徒の学びに向かう力や未知の状況に対応する力を導くものと考えられます。

 今回の探究という考え方により、高校から大学教育へのつながりが作られました。大学教育において必須となる情報収集の方法やまとめ方、発表の仕方に関する大学専門教育の基礎は、探究科目の中にその芽を持っていると言えるのです。

 知らないことを知り、それをさらに深化させることの喜びは、小学生から大学生まで同じかもしれないのです。学びに対する意欲は、小学校のころから存在しています。それを具現化する方法は学習が進むにつれて変化し、より精緻化され、強くなりますが、その根幹は変化しないのです。

 おもしろい実験があります。赤ちゃんのおしゃぶりの好みを調べた研究ですが、赤ちゃんは突起のある複雑なおしゃぶりを、通常のつるりとしたものより好むのです。幼児期のおもちゃの好みを調べた研究では、なじみのあるおもちゃと新しいおもちゃがあると、新しい方に注意が向けられるということが明らかになっています。

 人間は本来、複雑で未知なものに対して向かって行こうとする力を持っているのです。この力をうまく活用することにより、自ら学び、自ら創造する教育が展開できると考えています。

 小中学校の学びが、高校の教育をはしごにして、大学教育にまで接続する道が見えてきました。ひょっとすると、幼児教育から大学教育まで、そして生涯教育までがこの探究のキーワードでつながるかもしれません。結果が得られるまでは時間がかかるでしょうが、ちょっと待ち遠しくなっています。

河合優年(かわい・まさとし) 武庫川女子大副学長、同大教育研究所教授・子ども発達科学研究センター長。中央教育審議会で専門委員を務めたほか、科学技術振興機構の「日本における子供の認知・行動発達に影響を与える要因の解明」グループリーダーなどを歴任した。日本発達心理学会評議員、学校心理士スーパーバイザー。