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学生服もリユース 中古市場が急成長

制服の状態をチェックする馬場加奈子社長。傷み具合に応じて価格を設定する=6月18日、高松市上之町のさくらや高松店
制服の状態をチェックする馬場加奈子社長。傷み具合に応じて価格を設定する=6月18日、高松市上之町のさくらや高松店
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 中学、高校生の入学は何かと物入りで、制服一式で5万円かかることもあって悩ましい-。こうした親としての体験をふまえ、仲良し主婦3人組が11年前に立ち上げた学生服リユースの「さくらや」は全国に60店舗以上を構え、年間売り上げ3億円を超えるまでに成長した。開店は週3日だけ、1日5時間営業でもOKという、子育てママでも働けるスタイルは「働き方改革」を先取りした取り組み。馬場加奈子社長は「自分が働きやすいように、地域がもっと良くなったら、とひとつずつ実行したらこうなった」と自然体だ。

50着からのスタート

 第1号店となったのは高松市上之町の高松店で、平成23年1月に開いた。

 馬場社長は当時、中1の長女、小5の次女、幼稚園児の長男の3児の母。ごみ収集場に小学校の制服が捨てられていたことを知り、前年夏に子育て仲間と3人で学生服のリユース業を始めたが、思うようにいかなかった。

 「誰も聞いたこともないような仕事。それまでは自宅で営業していましたが、店がある方が信頼されるのでは」と開いた1号店は面積40平方メートル強、50着からのスタート。初年度売り上げは約120万円。

 扱うのは幼稚園~高校の制服、体操服など。中高生の学生服やブレザーの一式は夏・冬服を合わせて最低でも5万円前後。学校指定のジャージーや体操服などが3万円程度、通学かばんや靴なども加えると、入学時にかかる費用はこれだけでもかなりのものだ。

さくらや高松店の店内。各校の制服などが所狭しと並ぶ。店頭の在庫は4千着にも及ぶ=6月18日、高松市上之町
さくらや高松店の店内。各校の制服などが所狭しと並ぶ。店頭の在庫は4千着にも及ぶ=6月18日、高松市上之町
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 洗い替えは欲しいし、子供の成長に合わせて買い替えも何度も必要、生地が傷んだり破れたりすれば買い直し。卒業後は不要となるが、思い出として保管するには場所がいるし、リサイクルショップはあまり引き取ってくれない。

 かつては多かった近所で制服を譲ったり譲られたりという地域社会の結び付きが希薄となる中で、「ニーズは必ずある」と信じていた通り、数カ月後には反響が大きくなった。 1号店は現在、面積はほぼ倍に広がり、店頭に4千着、売買はそれぞれ年間8千件超、繁忙期の3月だけで500人以上、年間2千人以上来客するという。

単なるリユース店でない

 各地で店舗を運営する「パートナー」の募集は26年から始めた。パートナー制度はさくらやの活動や思いに賛同する人が店舗を持ち、組織として一緒に活動していくというイメージ。初期納入金のほかは毎月数千円の定額を納めれば参加できる。

 初期費用を抑えて参加できる仕組みにしたのは「ビジネスありきではない。やりたいのは子育て家庭の支援」(馬場社長)という考えからだ。審査、古物商申請、研修などを経てオープンするが「審査のときに徹底的に話を聞く。各自の地域での課題への問題意識があって、それを解決していこうという意思と実行力のある方とやっていきたい」と強調する。

高松市内にある1号店。学生服リユースの「さくらや」はここから始まった=6月18日、高松市上之町
高松市内にある1号店。学生服リユースの「さくらや」はここから始まった=6月18日、高松市上之町
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 各店の判断で在庫の問い合わせにLINEを活用するなどの手法開発のほか、こども宅食おすそわけ便(青森・八戸店)▽障害のある子供の母の会(広島店)▽フードパントリー(岩手・花巻店)-など独自の取り組みがなされている。現在、パートナーの申し出は350件以上と殺到している。

 さくらやの店舗自体がママ友コミュニティーという側面もある。客として訪れた母親たちが自身の悩みを話している中で、悩みの共有や情報交換ができる場になっているという。

 また、リユースで地域に多くの人が関わっていく場を作るという考えに基づき、和裁の得意なお年寄りに名前の刺繍(ししゅう)を外す仕事を、障害者就労支援施設には洗濯を、という手法などがそれぞれの店舗で取り入れられている。

共感の輪を広げたい

 生徒らに本来の目的で使用してもらうことを目指しているため、コスプレや収集などが目的の場合は販売していない。学生証など子供の身分証明書提示を求めるほか、やり取りの中で学校行事について質問するなどして判断しているという。

 店舗はここ2、3年で急増したが、それに伴う課題が「仕入れ」だ。28年頃に始めたのが「回収ボックス」だ。期間を決めて各所に設置し、これまでに企業や各種店舗、学校、公共施設などのべ200カ所以上が協力した。

 馬場社長の関心は子供の貧困問題にも向いている。「学生服を通じて社会への支援のやり方を考えて取り組む」ためにNPO法人「学生服リユース協会」を29年に設立。学生服はおろか学用品すらそろえてもらえない子供がいる実情をまず知ってほしいといい、貧困家庭への支援として学生服レンタル方式などの策を練っている。

 週3日、1日5時間営業には当初、冷ややかな目もあったという。いまや、働き方改革、女性活躍推進、ファッションロス、SDGsなど、時代が追い付いてきたようにすら見える。

 馬場社長は「素人の集まりだったが、みなさんの共感を得てここまでやってこられた。生活するうえで、やりがいや生きがいのある仕事をしたいという方は多い。そういう方々と一緒に地域への恩返しを続けていきたい」と話していた。(和田基宏)