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【一聞百見】「東大目指せ」の教育していない 灘中学・高校校長 和田孫博さん

昭和3年に開校した当時の本館を背景に歴史を語る和田孫博さん。「自由と自主性を重んじる校風は今も変わりません」という=神戸市東灘区(南雲都撮影)
昭和3年に開校した当時の本館を背景に歴史を語る和田孫博さん。「自由と自主性を重んじる校風は今も変わりません」という=神戸市東灘区(南雲都撮影)
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 東京大の合格者数の多さで話題になることの多い私立灘中学・高校(神戸市東灘区)。自身も卒業生で、45年間母校で教員を勤める和田孫博校長(68)は「灘校の最大の特徴は個性がひしめいているところ」という。OBには、作家の遠藤周作や中島らも、ノーベル賞受賞者の野依(のより)良治氏、4月に侍従長に就任した別所浩郎(こうろう)氏、西村康稔(やすとし)経済再生担当大臣らがいる。こうした個性豊かなOBたちの足跡を見聞きしてきた和田校長は近年、「夢を大切にしよう」と呼びかける中高生向けの啓発本を出版し続けている。和田校長に、その理由を聞いた。

夢を大切に

--中高生に向けた啓発本の出版を続ける理由は

和田 45年間の教員生活で、悩み多き思春期の生徒たちと接しました。子供たちはものごころついてから、興味のままにいろいろなことに関心を持ちます。そのことがタネとなって、将来人を幸せにすることにつながることも少なくありません。ですから、自分の夢を大切にしてほしいと伝えたかったのです。

--中学、高校、大学と進学するたびに受験勉強があると、夢を持ち続けることは難しいですね

和田 音楽教室の先生からよく聞きますが、才能があると思っても、中学受験のためにやめてしまう。親も将来を考えて「まずは勉強」と言ってしまう。特に最近は、少子化で親の干渉度合いが以前より高く、子離れが遅いように感じます。学習も大事ですが、子供の関心や夢を摘んでまで行う教育はよくないと考えています。

--新刊「未来への授業」は灘OBで夢を実現した人を紹介しています

和田 進学先もそれぞれで、職業は落語家、プログラマー、登山家、研究者、医師、音楽家、教員、レゴ認定プロビルダーと多種多様です。共通しているのは自分の夢を大切にして、それぞれの専門性で周囲の人を幸せにしているところです。今の教育環境でも、自分の夢を育てることは可能だということを知ってもらいたかったのです。

--夢を持ち続けられるのは、灘や東大へ行けるような家庭環境だからでは

中高生向けに監修、執筆した啓発本では「夢を大切にすることが他の人の幸せにもつながる」と説く(寺口純平撮影)
中高生向けに監修、執筆した啓発本では「夢を大切にすることが他の人の幸せにもつながる」と説く(寺口純平撮影)
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和田 この本で言いたかったのは、どの子供にも個性はあり、それを育てるには探究心が必要だということです。探究心は幼少期から活字に親しむことで誰でも身につけることができます。活字は絵本、新聞、漫画、今の子供ならスマホを駆使してでもいいのです。そうした基礎力、文字を読み自分で考える力があれば、自分の夢を育て、より良い人生を歩むことは可能だということを伝えたつもりです。

--大学や実業界からは自ら考え、学び、行動する力が今の子供には不足していると指摘されています

和田 それは大学受験を頂点とした現在の日本の、子供の学びの意欲への配慮を欠いた教育制度の弊害です。灘では入学後に、受験勉強で身に着いた「受け身の学習姿勢」から脱却させます。偏差値は人間の優秀さの尺度ではないと話し、各教科学習では、自分で調べ、意見を発表し、学びあう習慣を身につけさせます。

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