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【学ナビ】羅針盤 自分の道極めるリーダー育成 慶應義塾・伊藤公平塾長

慶応義塾長 伊藤公平氏(松井英幸撮影)
慶応義塾長 伊藤公平氏(松井英幸撮影)

 福沢諭吉が開いた蘭学塾から始まった慶應義塾。160年を超える歴史を紡ぎ、今では小学校から大学院までを擁し、世界で活躍する人材を輩出し続けている。コロナ禍の今、三大事業と位置づける教育・研究・医療も試行錯誤の連続だという。「社会の先導者としての理想を追い続けていくことは変わらない」と話す伊藤公平塾長に慶應義塾の未来について聞いた。(聞き手・宮田奈津子、写真・松井英幸)

--4月に塾長に就任し、コロナ禍で建学の精神の一つ“半学半教”ができていないと指摘した

「慶應義塾は教職員や学生が互いに学び、教えあう半学半教の精神を大切にしてきた。未知の感染症によって社会は揺れ、大学キャンパスも閉鎖になった。社会のために我慢しよう…と呼びかけて約1年半。大学4年間のうちの1年半は大きい。大学は人生の好循環を起こし、成功の道が始まっていく出発点でもあり、歯がゆさが募った」

--人とのつながりを重要視している

「慶應義塾は挑戦を学ぶ場所。ただ、肩肘を張ったものではなく、小・中学校、高校、大学と新しい友が加わり、その集団が仲間となって、課題に挑んでいく。一緒に遊び、いざとなる『まずいぞ。がんばらなくちゃ』と力を合わせ、社会に資することを考える。自分の力だけでは何もできず、人とのネットワークの大切さを知る。他者との関係性の中で、おおらかなリーダーが育っていくことが慶應義塾の魅力だろう」

--国際貢献、共生型学内環境整備を目標に掲げる

「20歳の学生は50年後には70歳となり、子供や家族がいるだろう。そのときの地球や社会はどうなっているのか-という想像力は不可欠になってくる。核となるのはSDGs(持続可能な開発目標)の達成で、国際貢献しながら、よりよい学内環境を整備していく」

--タイムズ・ハイヤー・エデュケーション「世界大学評判ランキング」(昨年11月)では日本の私大トップ。高い教育・研究力が評価された

「産学連携でも目先の経済だけを優先するのではなく、一歩、二歩先を見据える視点が重要だろう。大学の研究は、学問とビジネスのギャップを埋めていく点で意義がある。自分たちだけが豊かさを享受するのではなく、次の世代に良い社会をつないでいく教育・研究を目指す」

--自身も小学校(幼稚舎)から慶應義塾で学んだ

「自分、家族、社会のため…と独立自尊を教えられ、世界に出ていくことを意識していた。大学院修士・博士課程を米カリフォルニア大学バークレー校で過ごし、人権やポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)を意識した振る舞いの重要さを学んだ。こういう感覚は慶應義塾でも浸透させていきたい」

--どのような人材を輩出していきたいか

「教職員が一丸となり、先導者(リーダー)となれる塾生を育てていく。政治や経済、医療、芸術、スポーツなど、好きな分野で自分の道を極めてもらいたい。ただ、どのようなときも孤立するのではなく、仲間や社会、世界、未来を見つめてほしい」

いとう こうへい 昭和40年生まれ。慶應義塾大学理工学部卒業、米カリフォルニア大学バークレー校博士課程修了。慶應義塾大学理工学部教授などを経て、今年4月に塾長就任。専門は固体物理、量子コンピューター、ナノテクノロジー、半導体同位体工学など。55歳。