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【学ナビ】100歳大学で老いの覚悟と備え 國松善次・元滋賀県知事が普及活動

100歳大学の普及活動に奔走する元滋賀県知事の國松善次さん
100歳大学の普及活動に奔走する元滋賀県知事の國松善次さん

 ■健康や生きがい作り…“人生下山”教育必要

 元滋賀県知事の國松善次さんは、老い方の基礎教育を目指す「100歳大学」の普及活動に奔走している。人生100歳時代を迎え、これまで余生と考えてきた“老い”と向き合う時間はより長くなり、“もう一幕”といってもいいほどの年月が広がる。体力低下といった課題を乗り越え、充実した日々を過ごすために必要なのは老いへの覚悟と備えだ。既存の生涯学習とは一線を画した人生下山の教育として、100歳大学が注目されている。(宮田奈津子)

 ◆教育型福祉への第一歩

 「子供たちは“人生登山”の教育を受け、社会へ巣立っていく。一方、老いを学ぶ仕組みはない。老いてからの時間は長いが、生きる目標や役割を失ったように感じることがある。長生きをするためには、60歳を過ぎてからの生活について備える“人生下山”の教育が必要になってくる」

 健康と生きがい作りを目指す健康・福祉総研(大津市)理事長を務め、100歳大学の運営にあたる國松さんは、こう強調する。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計などによると、平成30年の100歳人口は約7万人。令和12(2030)年には約20万人にまで増加し、高齢化率は30%を超えると推測される。

 同県職員、知事として福祉に力を入れてきた國松さんは、100歳時代に備え、元気なシニアの育成や健康長寿のまちづくりの重要性を訴えてきた。平成23年に100歳大学構想を掲げ、同27年9月には國松さんの地元、同県栗東市で一期生37人を迎えて『栗東100歳大学』をスタート。同29年からは同県湖南市でも開講している。

 國松さんは「今までの高齢者福祉は、介護や年金など課題解決型の対症療法だったが、超高齢社会が到来すれば、限界が来るだろう。100歳大学は課題を回避し、介護などに頼らない老いの生き方を考える教育型福祉への第一歩」と指摘する。

 ◆まちづくりや地域貢献

 100歳大学は、高齢期の入り口となる65、66歳が対象となる。市町村が設置し、民間委託で運営を行う。期間は1年間で、体験や視察、討論など、毎週1回90分の授業を年40コマ受講する。修了生の希望者は、健康生きがいづくりアドバイザーとして認定され、100歳大学の運営をサポートする。

 カリキュラムは、「人づくり」と「まちづくり」を2つの柱にしている。人づくりでは、社会保障の仕組みを知り、運動や食事、生きがい、資産運用など、自身の生活を支える知識を学ぶ。

 従来の高齢者事業と異なるのは、まちづくりへの視点だ。高齢社会の一方、若年人口は減少していく。福祉を支える人材も不足する時代が予測される。高齢者が、地域課題や行政の動きを学び、地域に関わっていくことを重要視している。

 現在、開講されている100歳大学は2自治体のみだが、新潟県長岡市や愛知県大治町、和歌山市など、関心を寄せる自治体が増えているという。

 國松さんは、普及に向けて全国各地で講演活動を行っている。「日本は、高齢社会と長寿では世界のトップランナー。高齢になっても心身の健康を保ち、社会で活躍する。子育てといった地域課題に貢献できる高齢者を育てていく仕組みを考える機会にしてほしい」と話している。

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【プロフィル】國松善次

 くにまつ・よしつぐ 昭和13年生まれ。34年滋賀県立短大農業部卒、大阪府庁。41年中央大法学部卒、51年滋賀県庁。教育委員会事務局文化部長、健康福祉部長などを経て、平成10年滋賀県知事に初当選、2期8年務める。「100歳大学」を運営する健康・福祉総研理事長。