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【学ナビ】羅針盤 智慧と慈悲、課題解決する力になる

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 □駒澤大学・長谷部八朗学長

 仏教の教えと禅の精神を建学の理念に掲げる駒澤大学。学問の探究と同時に、物事の本質を洞察する“智慧(ちえ)”と人を慈しむ“慈悲”からなる柔軟な心を育む教育に尽力する。しなやかな精神こそが強靱(きょうじん)であり、現代社会の課題を解決する力になるという。宗教学者でもある長谷部八朗学長に、多様な価値観が交錯する時代を生き抜く心のあり方や伝統を次世代に引き継ぐ大学運営基本方針『学生ファースト』の真意について聞いた。(宮田奈津子)

 --仏教の教えと禅の精神は、現在の教育にどのような意味を持つのか

 「高等教育機関では、実用的スキルや高い教養を身につけるが、知識を蓄えても、社会で人間関係を結びながら応用していくことが難しい。つまり大学が問われているのは、精神性をどう鍛えていくのか-ということ。本学が掲げるのは“行学一如(ぎょうがくいちにょ)”。自己形成を目指す“行”と学問研究である“学”は一体である。バランスの良い魅力ある人材を育成する根幹になる」

 --柔軟な心が、魅力ある人材のカギになる

 「柔軟心とは、的確に判断して知識を応用できる“智慧”と、他者への思いやり“慈悲”からなる心のあり方を指す。仏教の教えはすべてここに集約する。得意分野を存分に活用すること、仲間への情愛、優しさと厳しさ…。多くの要素を包括する。困難に向かい合ったとき、状況に適応して突破する力に変わる。多様性が重要視されるなか、異質なものに対しての理解の原点にもなる。その先に、それぞれの新しい道が見えてくるだろう」

 --『学生ファースト』を推進している

 「学生をお客さま扱いすることではなく、学生の目線に立つこと。何を考え、求め、何が分からないのか。自発性・自立心・主体性を教職員が一体となって鍛えていく。社会では人に頼り、頼られる場面が必ずある。人と関わるためには自立心が必要だ。自己があるからこそ、他者の気持ちを想像できる。自発性や主体性があれば、学生にポジティブ・マインドが生まれる。日々の歩みは後退することもある。それでも再び前進する力を備えてもらうことが、真の学生ファーストだと思う」

 --地域に開かれた講座が人気を集めている

 「生涯教育の一環として、1962年から日曜講座を開設し、坐禅の実践や仏教学の講義を行っている。スポーツや音楽、祭り、こども大学など、さまざまな行事を通じて、多くの方々と交流する敷居の低い大学でありたい」

 --2022年には開校140周年。どのような大学の未来像を描くか

 「1592年に大学の起源となる学林が誕生し、1882年に曹洞宗大学林専門本校が開校した。2018年度より開校130周年記念棟・種月館の運用を開始した。キャンパスの充実は継続的に取り組んでいきたい。建学の理念を宙に浮いたものにせず、現実社会のあり方を直視しながら、歴史に厚みを加えていく。培ってきた伝統の上に立ち、時代に合わせて変化する刷新力を兼ね備えなければいけない」

【プロフィル】長谷部八朗

 はせべ・はちろう 1950年生まれ。慶應大商学部卒業後、駒澤大大学院人文科学研究科社会学専攻を経て、96年に同大仏教学部助教授に就任。2002年から同教授。17年4月から現職。日本宗教学会常務理事・評議員、日本山岳修験学会副会長を務める。