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【学ナビ】「江戸東京学」国内外から注目 持続可能な都市モデル

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 ■法大、横国大が研究

 今世紀半ばになると、世界の人口の過半数が都市部に居住すると予測されている。それに対応するには環境問題を克服し持続的に発展できる都市モデルが必要だが、従来の欧米の都市に見いだすことは難しいという。そんな中、世界屈指の規模で数百年にわたって発展を続ける江戸・東京を研究することで近未来の新たな都市モデルを提示する学問として、「江戸東京学」が国内外から注目を集めている。(山本雅人)

 ◆伝統生かして

 欧米の都市モデルとは異なる新たな選択肢を世界に示すという壮大な目標に取り組むのは、今年1月に設立された法政大の江戸東京研究センター(横山泰子センター長)。大学内に既にある理系の「エコ地域デザイン研究センター」と文系の「国際日本学研究所」の連携組織として立ち上げた。文部科学省の「私立大学研究ブランディング事業」の支援対象にもなり、フランス法学に基礎を置く研究機関として明治時代に発足した法大について、「法政といえば江戸東京学」と認知されることも目指している。

 江戸東京学の第一人者でもある田中優子総長は「新たに何かを始めてブランド化するというのではなく、これまでの蓄積を生かしたもの」と強調する。法大では戦前から江戸文化研究が盛んに行われてきたが、他大との際立った違いとして、文理の融合だけでなく、「時代別、学問領域別に区切らずに、つながったもの、総合的なものとして研究すること」を挙げる。従来、江戸文化の研究者は江戸時代だけで近代の東京は別領域、というのが主流だったという。

 田中総長らが1980年代に始めた江戸東京学は、学界のみならず社会的にもブームとなるほどの反響を呼び、エコ地域デザイン研究センターを育てたイタリア建築史・都市史の専門家、陣内秀信氏(現・法大特任教授)も、江戸がベネチアなどと並び運河などの多い水都として、舟運によって発展しエコに寄与してきたことを明らかにした。

 ◆徹底的なエコ

 近未来に大きな示唆を与える江戸の生活様式として、田中総長が挙げるのが「徹底的なリサイクル」だ。江戸の人たちは浴衣が古くなると雑巾やおしめ、さらには縄やげたの鼻緒などにし、それも古くなったら燃料として火にくべて灰となる。「最後は灰買いという商売の人たちに回収され、肥料となった」。排泄(はいせつ)物も肥料として船で江戸の外へ運ばれることで、清潔な環境が維持されてきたという。

 田中総長は「今回、時代的には江戸時代以前、空間的には現在の都心部だけでなく多摩・武蔵野地域まで研究対象を広げたことで、新たな都市モデルを提示できる成果に結びつけたい」と意気込みを語った。

 ◆「長屋」手本に

 西洋をモデルにした近代化が格差拡大や環境破壊などの行き詰まりを見せる中、江戸時代の長屋の暮らしを見直すことで、多文化共生の現代社会の構築に寄与できる人材を育てようとしているのは、横浜国立大の川添裕教授の研究室だ。

 「明治以降の近代化の中で、強い“個”の意識が強調されるようになった」としたうえで「例えば高齢者の孤独死など、長屋の生活では起きなかった」と指摘する。「国民性に合うだけの根拠があったから生活様式として成り立っていたのであり、今後、ますます多くの外国人と共生していく方向に進む中、一つのモデルになると思う」。川添教授は、長屋文化を芸術として表現したものが落語だとし、学生らに長屋文化の大切さと面白さなどを伝え続けている。

 ■江戸東京博物館

 江戸の町並みや日本橋の実物大復元模型などで江戸東京学の基礎が学べると好評。JR総武線両国駅下車3分、都営大江戸線両国駅下車1分。月曜(祝日の場合は翌日)休館。開館時間や入館料、展示内容などは同館ホームページ(https://www.edo-tokyo-museum.or.jp/)に掲載。