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【大学ナビ】個性を伸ばして頂点へ 学習院大学・井上学長、大学未来図を語る

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学習院大学・井上学長
学習院大学・井上学長

 ■自由な研究 「ネイチャー」最高評価

 少子化による人口減が続くなか、いかに国際競争力のある研究を行い、グローバル人材を育成してゆくのか。わが国の大学が抱える最大の課題であろう。その「解」となりうるのが、学生数は大規模大学の数分の1ながら、国際的に最も権威のある総合科学誌「ネイチャー」から「日本の大学トップ」の評価を受けるとともに、超高齢社会を見据えた新しい学問「生命社会学」を拓(ひら)こうとしている学習院大学(東京都豊島区)である。かじ取り役である井上寿一学長の知見と提言を詳報し、約8年にわたった小欄の締めくくりとしたい。 (編集委員 関厚夫)

 「同じような能力を持った人間を、金太郎アメを切るがごとくに量産するのではなく、学生一人一人の個性を認め、その良さと潜在的な能力を引き出すためにはどうすればよいかを考え、導いてゆく。それが大学の最も重要な役割だと思います」

 そう話す井上学長が描く、大学の未来図がある。そこにはいくつかの山があり、その山同士、また山の内部で切磋琢磨(せっさたくま)した結果、全体としての国際競争力が高められてゆく。旧帝大を頂点とする国公立大学の山、早稲田大や慶応大をトップにいただく私学の山や医歯薬系大学の山もある。学習院大は前述の私学の山に属するかと思いきや、そうではないという。

 「本学は『早慶に追いつき、追い越せ』とは考えていません。早慶を頂点とする山とは別の山があり、それがほかの山にひけをとらない高みに到達する。その頂点に立ちたいと考えています」

 2012~17年の間、「高品質な科学論文を最も効率的に発表している」との基準で評価した「Nature Index 2018 Japan」。科学論文の「量」よりも「質」を重視するこのランキングで学習院大学は日本の全大学中、東大を抑えてトップ。また全機関の中でも2位に入った。

 学習院大と長く友好関係にある甲南大は同じ関西の京都大や大阪大を上回る大学3位。同誌は「国として質の高い科学研究実績は低落傾向が続いているが、最も小規模な研究機関のいくつかが質の高い成果を最も効率的に産み出している」と概観している。

 ◆「日本でしか」の教育を

 井上学長は「対象となった本学の理学部の教員に聞くと、『みなが自由に、自分にとって一番重要な研究を行い、それを質の高い学術誌に発表したところ、結果的に評価された』とのことです。わが国の大学研究のあるべき姿を一つ、示すことができたと思います」と話す一方で、日本の大学の国際競争力に懸念を抱く。

 「現在、東南アジアの大学のレベルが非常に上がっています。日本の各大学が、自分の大学でしか学べないことは何なのかということを追究し、対応策をとらねば、優れた留学生は欧米だけでなく、シンガポールやマレーシアなどの大学を選ぶことでしょう。とはいえ、安易に授業を英語化しても留学生にアピールするとは思えません。それならば英語を母国語とする欧米の大学に進学する方がよい。日本の経済や政治、文化や歴史を学びたいから日本への留学を希望するのです。彼らは日本語能力を磨き、日本人と同じ授業を受けたいと考えているはずです」

 ◆若者よ、根源を問え

 画期を迎えているのは大学だけではない。本格的なAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)の時代に直面する大学生もしかりだ。未来の担い手である彼らに向け、井上学長は説く。

 「技術革新の進展にともない、社会が短期間のうちに大きく変化しています。そんな激動の時代にあって大学在学中に何を学ぶべきか。大学では一つ一つの技術ではなく、その原理を考える。IT分野ならば数学です。どれほどIT技術が発達してもその原理である数学をきわめた人は、いかなる時代にも対応できるはずです。より一般化して言うと、どんな問題に対しても、自分の頭で考え、それを自分の言葉で表現するトレーニングを積むこと。ここでいう『問題』とは自分の関心や興味の領域でかまいません。ただそこで物事を原理的に-根源から考えることが最も重要なのです」