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【大学ナビ】針路を聞く 東邦大学・炭山嘉伸理事長

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 ■未来開く充実のキャンパスと大学病院

 ■宝物は一人一人の学生たち

 93年の歴史をもつ医学部をはじめ、薬学・理学・看護学・健康科学の計5学部を擁する自然科学系の総合大学。大森(東京都大田区)と習志野(千葉県船橋市)にキャンパスを構え、都内と千葉県佐倉市にある3病院を拠点にわが国の臨床医学と地域に貢献してきた。そんな学校法人・東邦大学の理念は「生命(いのち)の科学で未来をつなぐ」。炭山嘉伸理事長によると、そこには医学者、また教育者として傑出していた創立者、額田晉(ぬかだ・すすむ)の精神が息づいているのだという。(編集委員 関厚夫)

 --「自然・生命・人間」が建学の精神だそうですね

 「この言葉は晉先生が戦後に上梓した著書の題名にちなんでいます。本学の教育理念に則しながら説明しますと、自然に対する畏敬の念をもち、生命に対する尊厳を自覚し、人間として謙虚に生きつつ、かけがえのない自然と人間を守るための豊かな人間性と知識・技能を有する人材を育成する-ということです。

 なかでも重視しているのは『豊かな人間性』ですが、それを養うには本学にとって宝物である学生たち一人一人に対する人間愛に満ちた教育が必要となります。幸いなことに在学生も卒業生も一様に『東邦大学に入ってよかった』との感想をもってくれているようです。これは前述の理念に基づいた教育が実践されてきた証しであると自負しています」

 〈東邦大学の前身である帝国女子医学専門学校は大正14(1925)年、ともに東京帝国大学医科大学(後の東大医学部)出身の額田豊・晉兄弟によって設立された。「晉先生」は、近代を代表する文豪で、軍医としても頂点を極めた森鴎外の晩年、唯一の主治医を務めた。また「豊先生」は病院経営者として、またベストセラー『安價(あんか)生活法』の著者としても知られた多才の人だった〉

 --創立者に劣らず、卒業生もそうそうたる面々です

 「肢体不自由児の治療に尽くし、日本女医会会長を務めた龍(りゅう)知恵子先生は帝国女子医専1期生です。女性科学者の草分け的存在で、優れた女性科学者に贈られる『猿橋賞』の創設者、猿橋勝子先生は帝国女子理学専門学校(現理学部)、詩人の茨木のり子さんは帝国女子薬学専門学校(現薬学部)の出身です。現代の卒業生たちも頑張っています。たとえば昨年度の国家試験の合格率は医師は全国11位、薬剤師は7位でした。就職率は薬学部で100%、理学部で98%。就職先の企業から研究室に『教え子の方は本当に優秀ですね』といった声が多く寄せられていると聞いています。いずれも本学の誇りです」

 〈東邦大はここ十数年の間に、産学連携本部を設置し、羽田空港には2つのクリニックをオープンさせた。今年6月開院予定の新大橋病院(目黒区)は、東京都の区南部地域災害拠点中核病院に指定されている大森病院とともに、さらに高度で手厚い地域医療への貢献が期待されている〉

 「学校法人のトップとして教学環境、そして医療環境を整えることに全力を傾注してきました。一方で、私どもは発生から7年を迎えた東日本大震災を決して忘れていません。大森病院では年に3回、防災訓練を行っていますが、そのうちの一つは『3月11日』前後に実施しています。また晉先生は存命中に長男や次女、末弟ら多くの親族を失ったうえ、関東大震災を経験しました。先生の著書はそうした多くの悲しみを乗り越えて自身が生き抜くために著されたという側面があります。それゆえその言葉には、『災後』に生きるわれわれに対する貴重な示唆が込められていると考えています」

【プロフィル】炭山嘉伸

 すみやま・よしのぶ 昭和45年、東邦大医学部卒。米国留学、同部講師などを経て62年1月、外科学第三講座教授。学生部長や図書館長、大橋病院長を歴任し、平成21年9月より現職(3期目)。75歳。