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日本製すだれの伝統技術 海外製にはない優美なしなやかさ

すだれに縁付けをする杉多製簾の杉多公一社長=大阪府富田林市
すだれに縁付けをする杉多製簾の杉多公一社長=大阪府富田林市
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 夏に涼しさを届けるすだれ。極細の竹で編まれ、外から適度な光と涼やかな風を呼び込む。大阪府富田林市は江戸時代から約300年続く日本を代表する生産地の一つ。ここで生まれたすだれは「大阪金剛簾(すだれ)」と呼ばれ、国の伝統的工芸品にも指定されている。住宅様式の変化や、安価な中国製品の台頭で需要減に悩まされてきたが、しなやかな日本のすだれの伝統の技術は現代に、再注目されている。   (大島直之)

いいすだれは、いい竹選びから

 富田林市北部の丘にうっそうと竹が茂る。天保10(1839)年創業の「杉多製簾(すぎたせいれん)」(富田林市)の6代目、杉多公一社長は、注意深く竹を選ぶと、のこぎりで竹を切り倒していった。

 「いいすだれはいい竹から生まれる。鮮やかな緑色、太さ、つやなどを見ながら選んでいく」

 良い竹を育てるために普段から間伐など手を入れている竹林から、年間2、300本を切り出す。すだれに適した竹は生育4、5年のもの。それより成長すると硬すぎてしまう。杉多社長は「適齢期を過ぎれば硬すぎ、若すぎれば柔らかすぎる」と説明する。

 切り出された竹は本社工場に運び込み、細かく割って加工して細い棒「竹ヒゴ」にする。すだれに使う竹ヒゴは1本幅2ミリの細さ。これを実現するには、成長期のしなやかで強い真竹が欠かせない。

すだれに適した竹を選ぶ、杉多製簾の杉多公一社長=大阪府富田林市
すだれに適した竹を選ぶ、杉多製簾の杉多公一社長=大阪府富田林市
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 天然竹の美しさが際立つ大阪金剛簾は装飾性が高いのも特徴だ。神社仏閣で使われる「御翠簾(おみす)」は、節を使って模様を描くため、竹ヒゴをより分ける作業も慎重に行う。編み機などの機械も利用するが、杉多製簾では今でも手作業で仕上げる過程を多く残している。

竹かご作りがルーツ?

 大阪金剛簾の源流は、江戸時代前期の明暦年間に富田林・新堂村(現在の富田林市若松町)に流れ住んだ武士が、竹かご作りを村人に教えたことにあると伝えられる。大阪簾工業協同組合の森口博正事務局長は「竹かごや竹ざるなどの竹製品が、その後のすだれ作りに発達していったのだろう」と推測する。

 富田林市の中央を流れる石川の西岸に位置する村には竹が群生し、粘土質の土壌で育った良質の真竹が多く取れたことともすだれ産業発展を後押ししたとされる。明治から昭和にかけては機械化も進み、大量生産も可能にした。

 ピークは戦後復興期で住宅の建設も増えた昭和30年ごろに迎えた。「はっきりとしたデータは残っていないが、富田林のすだれは全国的にシェアも大きかったとみられる」(森口博正事務局長)という。富田林で技術を習得した職人らが府内の周辺地域、太子町や大阪狭山市、河内長野市などで独立創業するなど、産業として広がりをみせた。

 「子供のころは大量の竹が行き交っていた。時代とともにリヤカー、三輪自動車、軽トラックと竹を運ぶ手段が変わったが、この辺りはとにかく活気があった」

 杉多社長もこう懐かしむ。当時は竹を割る、竹ヒゴを作る、編むと工程ごとに業者が分業し、加工中の竹が町内と周辺を行ったり来たりしていた。

インテリア用も登場

 ただ、古来の日本家屋が少なくなったことなどから、昭和から平成にかけてすだれの需要はしぼんだ。障子やふすまと同じように、すだれが必要とされる機会も激減したのだ。事業所ではブラインドが登場し、エアコンが普及したことも逆風となった。富田林など南河内の事業者は減少。5つほどを残すだけとなった。

お座敷すだれのある和室(大阪簾工業協同組合提供)
お座敷すだれのある和室(大阪簾工業協同組合提供)
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 平成23年の東日本大震災直後には、軒先にかけることで日よけ効果が期待されるとして、すだれやよしずが夏場の節電対策として再注目された。しかし、市場に出回るのは、安価な中国製が多いという。それでも杉多社長は「しなやかで寸法のきっちりそろった竹ヒゴ作りや、節を使った模様の描写など手間のかかる緻密な仕事は海外製にはまねできない。日本の伝統ならではの技術」と胸を張る。

 需要を掘り起こす取り組みも始めた。装飾性の高い大阪金剛簾は、これまで主に神社仏閣用の御翠簾や、料亭などに向けた「お座敷すだれ」などとして広く流通してきたが、新たに「インテリア用」として、デザイン性を重視した製品の開発も進める。竹以外の木や、染色した材料を加えたものや、アコーディオンのように縦にたためる「カーテンすだれ」もある。

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 新型コロナウイルス感染拡大以降は休業や時短営業となった百貨店などからの注文に影響は出ているものの、通販サイトの売り上げは好調という。

 杉多社長は決意する。「すだれは、うちわや浴衣、打ち水、風鈴と同じように、見るだけでも涼しくなる日本ならではの文化。すだれを作る技術を守り続けていきたい」

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