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空からゴミが降ってくる 星新一作品は予測した 鹿間孝一 

 「ショートショートの神様」と呼ばれたSF作家、星新一さんは生涯に1000話を超える作品を生み出した。どれも寓意があり、鋭い予見性にドキリとさせられる。

 「おーい でてこーい」は、台風で小さな社(やしろ)が流され、直径1メートルほどの穴が見つかる。動物のすみかなのかと「おーい、でてこーい」と叫んでみたが反響がない。石を落とすと底なしのように深い。利権屋が「穴をください。埋めてあげます」と申し出て、ゴミ捨て場にした。原子炉の廃棄物から、大学で実験に使われた動物の死体、不要になった役所の機密書類、別れた恋人との写真や古い日記など、ありとあらゆるものが穴に投げ込まれた。

 ゴミがなくなって町はきれいになり、新しいビルが次々と建てられた。ある日、建築中の高い鉄骨の上で作業員がひと休みしていると、頭上で「おーい、でてこーい」と叫ぶ声がして、小さな石が彼をかすめて落ちていった。

 久しぶりに読み返したのは、制御不能になった中国の大型ロケットの残骸が大気圏へ再突入するニュースがあったからだ。インド洋に落下して被害はなかったが、天からゴミが降ってくるという、環境問題に警鐘を鳴らしたこの作品が、60年以上も前の昭和33(1958)年に書かれたことに驚く。

 打ち上げロケットの残骸や運用を終えた人工衛星などの宇宙ゴミ(スペースデブリ)が大きな問題になってきたが、身近なゴミはより深刻である。

 コロナ禍で“巣ごもり”を余儀なくされているせいか、家庭から出るゴミが急増している。ゴールデンウイーク明けにはマンションのゴミ置き場に山のように積まれ、とくにテークアウトやデリバリーの料理のプラスチック容器が多いのが目についた。せっかくエコバッグの利用が広がってきたのに、これでは有料化してレジ袋を減らした意味が薄れてしまう。

 「おーい でてこーい」は、ゴミを穴に捨てるのは問題を先送りするだけで、いつか手痛いしっぺ返しを食らうと教えてくれる。

 まずはコロナ禍を収束させるのが最優先としても、ゴミの減量も喫緊の課題である。加えて地球温暖化、人口爆発、少子高齢化、食糧不足などさまざまな難題が待ち受けている。

 未来を考えるには柔軟な想像力が必要だ。星さんのSFショートショートはもっと評価されていい。

 しかま・こういち 昭和26年生まれ。社会部遊軍記者が長く、社会部長、編集長、日本工業新聞社専務などを歴任。特別記者兼論説委員として8年7カ月にわたって夕刊1面コラム「湊町365」(産経ニュースでは「浪速風」)を執筆した。

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