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【漫画漫遊】「芸能界」の闇も光も 「【推しの子】」 赤坂アカ、横槍メンゴ著

(C)赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社
(C)赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社

 毎年新緑の季節になると、日ごとに茂る若葉の青さに心を奪われてしまう。斬新な切り口で芸能界の闇も光も描いた本作は、今の季節と重なる強い躍動感とポテンシャルを兼ね備えた漫画だ。個人的には、「連載をリアルタイムで体験する楽しさ」を思い出させてくれた作品の一つでもある。

 多くの大人が一度は夢想する、「今の知識のまま子供時代から人生やり直す」過程が描かれる。主人公の男性医師は不審者に殺され、何の因果か、大ファンのアイドル・星野アイの息子アクアに転生する。双子の妹ルビーも同様の転生経験者。高校生になったアクアとルビーは、復讐のため、前世からの夢をかなえるため、それぞれ役者、アイドルとして芸能界の門を叩く-。

 『かぐや様は告らせたい』の赤坂アカさんと『クズの本懐』の横槍(よこやり)メンゴさんの共作。コメディーあり、青春のときめきあり、サスペンスあり、先読みできない衝撃的展開あり…と魅力は多種多様。物語の世界にグイグイ引き込まれてしまう。また、横槍さんが描く女の子の表情がとにかくかわいい。華やかな芸能界の裏側で嘘と打算にまみれながらも、壮絶な努力を重ねる若者たちの姿は美しく、生命力を感じさせる。

 大多数のキャラクターがエゴサ(自分自身をネット検索する行為)をしているなど、設定や会話のディテールは実に今風。若者の恋愛事情を番組化する「恋愛リアリティショー編」では、登場人物が自殺未遂にまで追い込まれる。現実に起きている社会問題も作品には投影されているのだ。

 題名にある「推(お)し」の意味は、「特に引き立てて応援している人や物」(『明鏡国語辞典 第三版』)。先日の芥川賞も21歳の気鋭作家、宇佐見りんさんの『推し、燃ゆ』が受賞したように、「推し」は現代の若者文化を象徴する言葉の一つとなっている。『【推しの子】』というタイトルにも、幾重もの意味が込められている。実に心憎い。

 芸能界の力学や裏事情、「演出とは何か」など基本的なことが分かりやすく描かれており、映画やドラマファンにもおすすめ。19日には最新4巻が刊行。今後もさらなる歓喜と絶望を読者に突きつけてくれるかと思うと、楽しみで仕方ない。(文化部 本間英士)

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