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【正論6月号】官僚組織壊した「真紀子騒動」の教訓 産経新聞論説副委員長 佐々木類

東京・霞が関の外務省
東京・霞が関の外務省

 ※この記事は、月刊「正論6月号」から転載しました。ご購入はこちらをクリック

 平成時代の政界が三十年かけてできなかったのが、政権交代可能な二大政党制だった。それを妨げたのは国際社会を席巻している理念なきポピュリズムである。東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗前会長への執拗なまでのバッシングや相次ぐ政界スキャンダルをみていると、それは令和の時代にも負の遺産として引き継がれているようにもみえる。

 大衆受けを狙ったポピュリズム政治という安易な手法は、世論の支持を取り付ける手段としては重宝されよう。だが、将来にわたってこの国の形を方向づける骨太の国家運営がかなわなくなるという点では致命傷となりかねない。民意が必ずしも中長期的な視点で動くとは限らないからである。

 いつから日本はポピュリズムという病に侵されてしまったのだろうか。記憶に新しいところでは、平成十三年に「自民党をぶっ壊す」と言って党総裁選で勝利した小泉純一郎政権がそれである。政権発足の立役者が、その後、外務省に戦後最大級のダメージを与えた田中真紀子元外相であった。

 「小泉劇場」に多くの国民が熱狂し興奮した。郵政民営化の是非を問うことのみに焦点をあてたシングル・イシュー選挙は、国民の政治への関心を高めた効果はあるだろう。だが、度が過ぎていた。テレビのワイドショーは連日、小泉首相を追いかけた。小泉氏は党内に抵抗勢力という悪役をつくり、彼らを退治する水戸黄門を演じることによってチャンバラを演出し、大衆の拍手喝采を得た。郵政民営化法案が参院で否決されたのに、可決した方の衆院を解散し、法案に反対する議員の選挙区には賛成派の刺客を放った。「郵政選挙」では政治の素人としか思えない候補たちがバッヂを付けた。「小泉チルドレン」といわれる新人議員らだ。政界から消えた議員も数知れない。大衆受けを狙ったポピュリズム政治のなれの果てだ。

 国民世論の高い支持を背景に、小泉氏は特定分野の専門家集団である「族議員」が支配してきた既得権益に大胆に切り込んだ点は評価できよう。調整や妥協という自民党が得意とする政治手法は、国民の目に見えにくく時間と金がかかるとの批判がつきまとった。小泉氏はこの手順を飛ばして意見の異なる者に対し徹底的に不寛容な姿勢を貫いた。与野党が調整を図る場として衆参両院の非公式組織である国会対策委員会という政治のインフラを機能不全にした。

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