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土偶作者は右利きの可能性 文化財の新たな“鑑賞”手法、トーハクとNHKが8Kプロジェクト

3Dスキャンを使い、遮光器土偶の形状を写し取る作業
3Dスキャンを使い、遮光器土偶の形状を写し取る作業

 縄文人の息吹を伝える土偶や400年前の人々の生活を描いた屏風(びょうぶ)など、東京国立博物館(トーハク、東京都台東区)の貴重な収蔵品の鑑賞に、NHKの超高精細映像「8K」技術を用いる試みが始まった。トーハクとNHKが共同で進める「8K文化財プロジェクト」だ。博物館開館150周年となる令和4年度までに、計8点の文化財を8K技術などを用いて写し取り、これまでになかった鑑賞方法を研究するという。(文化部 道丸摩耶)

 プロジェクトは昨年9月に開始。超高精細映像のデータを3D(立体)で再現する「8K文化財」に最初に選ばれたのは、青森県つがる市から出土した重要文化財「遮光器土偶」と、400年前の京都の姿を描いた国宝の「洛中洛外図屏風(舟木本)」だ。

データを立体的に再現

 まずは紀元前1000~400年の縄文時代晩期に作られ、片足部分が失われている遮光器土偶の形を、3Dスキャナーを使い約7時間かけて計測。さらに、高解像度のデジタル画像でさまざまな角度から200枚以上撮影し、土偶の形状と質感、色を記録した。X線を使ったCTスキャナーも用い、空洞となっている土偶内部の様子も立体的に再現できるようにした。

 こうして膨大なデータを元に立体的に再現した「8K文化財」の土偶は、左右前後だけでなく、通常の展示では難しい上下からの鑑賞も可能だ。ゲーム用のコントローラーを使って見たい部分を拡大すれば、肉眼で確認しづらい色や模様もよく見える。立体的に表示できるディスプレーに映すと、自分が土偶内部に入っているような感覚も味わえる。トーハクの松嶋雅人研究員によると、「土偶内部には、縄文人が粘土を指でなぞった跡が確認できる。この縄文人は右利きとみられる」という。まさに、縄文人の息吹が感じられる鑑賞体験だ。

 一方の「洛中洛外図屏風(舟木本)」は、高精細画像で写し取ったことで、描かれている2700人超もの人物ひとりひとりを拡大して鑑賞することが可能となった。「舟木本は左右の屏風で筆者が異なるとされているが、拡大して見ることで、研究者でないと見分けることが難しかった輪郭線の筆運びなど、筆の違いが確認できる」と松嶋氏。花見をする女性や理髪店の様子など、江戸時代の人々の暮らしも、大型スクリーンで確認できる。

 NHK制作局の国見太郎チーフプロデューサーは、「文化財保護の観点から、通常の番組撮影では作品に接近したり強い照明を当てたりすることが難しい。しかし8K文化財であればそうした映像も可能になる」と語る。一度計測してしまえば、3Dプリンターを使って、同じ形、重さのレプリカを複数作ることも容易だ。ケースの中に展示されている文化財は目で見るだけだが、レプリカであれば手に取って重さを確認するなど、新たな鑑賞体験ができる。

コロナ禍の新たな方法

 コロナ禍で、世界の多くの博物館では、休館や企画展の中止を余儀なくされている。海外から作品を借りたり、人が集まる人気展を実施したりすることも難しくなった。現地に足を運ばずともそこにあるかのように作品を鑑賞できる「バーチャルリアリティー(VR)技術」を使った展示など、さまざまな試みが模索されている。

 トーハクでも、コロナ禍以前から、8Kに代表される高精細画像をどう展示に生かしていくか検討を重ねてきた。そこへNHKとの共同研究が決まり、井上洋一副館長は「8K文化財をさまざまなデジタルツールと組み合わせることで、よりリアルで、肉眼で見ることのできなかった鑑賞が可能となる」と話す。

 7月13日から始まる特別展「聖徳太子と法隆寺」で早速、8K文化財を体験できる展示が企画されている。また、8K文化財での鑑賞にふさわしい文化財を選ぶ作業も進む。井上副館長は「8K文化財をきっかけに文化財に興味を抱いてもらい、本物に会いに博物館に来てもらいたい」と期待を寄せている。

 東京国立博物館と共同研究を進めるNHKでは、8K文化財の魅力を紹介する番組を製作。主な放送予定は4月21日午前10時半、BSプレミアム 特別編「百済観音」(法隆寺 蔵)

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