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【新・仕事の周辺】成毛眞(書評サイト「HONZ」代表) 自分のなかの静かなる戦い

成毛眞さん
成毛眞さん

 この春、『2040年の未来予測』(日経BP)という本を上梓した。日本マイクロソフト社長を平成12年に退任し、物書きを生業としてから44冊目の本だ。幸いにも広い年齢層の読者から好評をいただき、この原稿を書いている時点で、販売部数は13万部に達している。

 これまでさまざまなジャンルの本を書いてきた。テーマは千差万別。その内容はまるで総合月刊誌に何年間にもわたって連載されていたコラムを一冊にまとめたようなものが多い。

 それもそのはず、全国出版協会によれば月刊誌の売り上げは8年の1兆2千億円をピークにして、令和元年には5千億円を切るまでに低迷している。面白い連載コラムは読みたいが、そのために雑誌をまるごと一冊買うまでもないと考える読者が増えてきているのではないか。ならば最初から本としてまとめてみよう。そんなことを考えながら毎回テーマ選びに苦心している。

 さてテーマを決めた時点から仕事が始まる。まずはテーマに関連する本を買う。本を選ぶ条件は出版されてから10年以内。最低でも10冊。多い時には30冊程度の本を集める。重要なことはそれらの本に何が書かれているかではない。むしろ何が書かれていないかを調べたいのだ。

 読者はすでにどこかで書かれているようなものを、お金を出してまで読みたくないはずだ。その著者ならではの新鮮な視点や柔軟な思考を読みたいはずなのだ。それを担保するための「仕事としての読書」こそが重要だと思っている。

 ところが資料として本を読み進める間に、優れた本に出会ってしまうと、しばらく仕事にならないことがある。自著を書く気がそがれてしまうだけではない。自分の知識の幅や思考の浅さに嫌気がしてしまい、穴があったら入りたい気分になることがある。

 必死になって別の視点を考えてみるのだが、この著者にはかなわないと覚悟して撤退することもある。自分のなかの静かなる戦いだ。こうして最初のテーマ選びの段階で3割くらいが棄却される。

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