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【コロナ その時、】(23)忍び寄る第3波の影 2020年10月1日~

 「クラスター(感染者集団)等で感染者の増加が見られる地域がある。移動が活発化していることにも留意が必要だ」

 発足間もない菅義偉政権が旅行や飲食などの経済回復支援事業「Go To キャンペーン」を拡大した昨年10月。厚生労働省に新型コロナウイルス対策を助言する専門家組織の会合が28日に開かれていた。

 専門家が注目したのが、全国の人口10万人当たりの新規感染者数の推移だ。6~12日の1週間は2.84人だったが、13~19日は2.95人、20~26日は3.21人と徐々に増加。クラスターも会食や職場、外国人コミュニティーなど「多様化がみられる」とし、冒頭の懸念につながった。

 行楽シーズンを迎え、「Go To トラベル」への東京発着追加(1日)もあって往来が活発化し、人出が増えていた。専門家組織は「(感染の)増加要因と減少要因のバランスが崩れてもおかしくない。早急な対応が必要」と警告したが、この頃が第3波の兆しだったと後に位置づけられることになる。

経済と家計への「打撃」色濃く

 世界に目を転じると、欧州でフランスやドイツの新規感染者が過去最高を更新し第2波に突入。10月以降、欧米ではロックダウン(都市封鎖)に再び踏み切る動きもみられ、専門家組織も海外との往来に警鐘を鳴らしていた。

 世界は何度も押し寄せる感染拡大の波に翻弄されてきた。ようやくワクチン接種が始まったが、行き渡るには時間がかかり、多くの変異株も出現。東京五輪・パラリンピックも迫る。3密(密閉、密集、密接)回避やテレワークなど「新たな日常」が浸透しつつある一方、出口が見通せない鬱屈とした空気が社会を重く覆っている。

 国内では新型コロナウイルス感染拡大の昨春の第1波、同夏の第2波を経て、経済と家計への打撃が色濃くなっていた。

 企業で賃金カットの動きが広がり、全日本空輸は10月7日、労働組合に全社員約1万5000人の給与減額と冬のボーナスにあたる一時金の支給見送りを提案。人事院は同日、令和2年度の国家公務員一般職の賞与について10年ぶりの引き下げを勧告した。田村憲久厚生労働相は13日、9月の自殺者数(速報値)が前年同月比8.6%増の1805人だったとして、「相談体制を整えていかねばならない」と述べた。コロナ禍の鬱屈や景気悪化を背景に社会不安は確実に広がっていた。

 政府は経済回復の動きを加速したが、混乱も相次いだ。観光支援事業「Go To トラベル」に東京発着が1日から追加されたが、政府予算が限られ、割引を一時終了するサイトが続出した。5日には飲食店を支援する「Go To イート」事業のプレミアム付き食事券の販売が始まったが、予約して少額の一品のみを注文し差額分のポイントを稼ぐ事例が多発した。

 エンタメ界も人出が戻りつつあった。16日に封切られたアニメ映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」はコロナ禍を吹き飛ばす大ヒットとなり、公開から3日間の興行収入が歴代1位の46億円を記録。大規模スポーツ観戦の入場制限緩和に向け、プロ野球では30日から、東京五輪会場でもある横浜スタジアム(横浜市)で、定員の50%を超える観客を入れる実証実験が行われた。

10月2日 トランプ米大統領も感染判明

 海外に目を転じると、日本と対照的に欧州が感染再拡大に直面していた。フランス、イタリア、ドイツで15日、新規感染者が過去最多を更新。フランスのマクロン大統領は「私たちは第2波のただ中にいる」と警戒を表明し、17日に夜間外出禁止令を出した。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長も16日、「多くの都市で集中治療室の病床が数週間以内に収容能力の限界に達しようとしている」と警戒を呼びかけた。

 大統領選が翌月に迫った米国でも深刻な事態が起きていた。コロナの脅威を軽視するような発言を繰り返していたトランプ大統領とメラニア夫人の感染が2日に判明。ホワイトハウスの政府高官も次々と感染した。全米の感染者は19日に累計800万人を超え、感染が収まる兆しはなかった。

専門家組織「10月以降、新規感染が微増」

 就任間もない菅義偉首相に逆風が吹いた。1日に日本学術会議の新会員候補のうち6人の任命を見送り、「総合的、俯瞰(ふかん)的」な判断といった説明の不明瞭さもあって、学者や野党の一部が猛反発した。首相は18日に就任後初の外遊に出発し、ベトナム、インドネシアを歴訪。それだけの余裕がまだ当時の政権にはあったといえる。

 ただ、9月に一時200人台まで下がった新規感染者数は、10月はおおむね400~700人台で推移していた。厚生労働省に対策を助言する専門家組織は28日、感染者数が10月以降微増しているとの分析を発表。これが後に第3波の前兆と位置づけられる。

 帰省や初詣といった人の移動が多い年末年始を控え、マスクなしでの会話、飲酒を伴う懇親会など感染リスクが高まる「5つの場面」を政府が挙げるなどして注意喚起を始めたのもこの時期だ。

 政府のコロナ対策分科会は23日、年末年始は官民とも休暇の分散取得を進めるべきだと提言。これを受け、西村康稔経済再生担当相が同日、「12月25日くらいから1月11日まで休みを取るのも一案との意見もあった」と休暇延長などを呼びかける方針を表明したが、企業には困惑が広がった。

 自民党の二階俊博幹事長も26日、「聞いていない」と不快感を示し、西村氏が火消しに追われたが、政府・与党は感染再拡大の兆しに動揺を隠せないでいた。

 国内では2度の緊急事態宣言を経ても感染の収束は見通せず、入り口にさしかかった第4波以降の感染拡大への備えも急がれる。そのためにも必要なのが、第3波までのさまざまな出来事を踏まえ、感染拡大の実態と要因を検証することだ。コロナ禍と主な出来事を記録する連載「コロナ その時、」は、第3波につながる昨年10月時点から検証を再開。なお続く感染症との戦いと共生への道を追い続ける。

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