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処理水放出へ最終調整 廃炉作業大きく前進も

処理水タンクが並ぶ東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)=2月26日(本社ヘリから、川口良介撮影)
処理水タンクが並ぶ東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)=2月26日(本社ヘリから、川口良介撮影)

 政府は東京電力福島第1原発のタンク群にたまり続けているトリチウムを含む処理水を海洋放出する方向で最終調整に入った。処理水の海洋放出による安全性については、経済産業省の「処理水小委員会」がすでに確認済み。廃炉の重要工程となる、溶融した燃料(燃料デブリ)の取り出しには処理水が入った約千基のタンクを片付ける必要があり、事故後10年を経て廃炉作業が大きく前進する可能性が出てきた。

 第1原発では、事故で溶け落ちた燃料デブリを冷やすための注水などで現在も処理水が増え続けている。東電は、処理水の保管タンクの容量が令和4年秋ごろには満杯になると説明しており、処理水の処分は待ったなしの状況となっていた。

 こうした現状を踏まえ、政府は当初、昨年10月に関係閣僚会議を開き、海洋放出を決定する段取りを描いていた。しかし、風評被害を懸念する漁業者らの意見もあり、決定を先送りにし、関係者との意見交換を重ねてきた。

 今年3月23日には梶山弘志経産相が国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長とテレビ電話で会談し、「IAEAに科学的知見を基に、処理水の実態と安全性を国内外に発信してもらいたい」と要請。グロッシ氏の全面協力を取り付けるなど、海洋放出に向けての環境整備を進めていた。

 トリチウムは原発の通常運転でも発生し、放射線が微弱なため基準値以下に薄めて海に流すことが世界の原発では一般的になっている。福島第1の処理水もトリチウムを薄める濃度基準は同じで、科学的に影響はないとされる。

 もっとも、仮に処理水の海洋放出が決まったとしても、課題は多い。放出に向けて設備工事や原子力規制委員会の審査が必要で、放出開始までさらに2年程度かかるとされているからだ。

 その先には炉心溶融を起こした1、2、3号機の燃料デブリの回収が待ち受ける。国と東電は2041~51年の廃炉完了を目標としているが、すでに工程は遅れており、実現はほぼ不可能な状況だ。

 処理水の海洋放出にはまず風評被害への懸念を持つ全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長や地元漁業者の理解を得られることが大前提となる。廃炉作業を進めるうえで処理水問題がクリアされることは、次期エネルギー基本計画における国の原発政策の在り方を議論するうえでも重要で、政府は問題解決に向け、正念場を迎えている。(那須慎一)

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