PR

ライフ ライフ

【痛みを知る】三大合併症の中でも深刻な糖尿病性ニューロパチー

 「ニューロパチー(神経障害)」とは「主として末梢(まっしょう)神経の障害を指し、その原因には遺伝、外傷、中毒、代謝異常、炎症、虚血、感染など、さまざまなものがある」とされている。末梢神経が存在する部位であれば、どこでも発症する可能性がある。なお共通の症状としては、知覚障害や痛み、運動障害、自律神経の障害のほか、腱反射や筋力の低下、神経が情報を伝える速度が遅くなるなどがあげられる。

 さて、「糖尿病性ニューロパチー」である。糖尿病とは読んで字のごとく「尿に糖分が多く出る病気」であるが、正確には「インスリンの作用不足によって血液中の糖分の増加などの代謝異常をきたす病気」だ。いわゆる生活習慣病の代表である。

 わが国でも患者数は爆発的に増加しており、厚生労働省が2016年にまとめた調査では、糖尿病とその予備軍を合わせると約2千万人と推計している。この傾向は世界各国でみられ、2006年には、国連が11月14日を「世界糖尿病デー」に指定している。

 糖尿病では、血液中の糖分の増加によって細い血管が障害されることで、さまざまな臓器に問題を起こす。血管障害による網膜症、腎症、神経障害を糖尿病の3大合併症と呼ぶが、これらは自覚症状がないまま進行することが多いので注意が必要だ。

 なかでも神経に対する影響は深刻である。脳神経、末梢神経(知覚神経、運動神経)、自律神経など体中すべての神経が障害される可能性があるが、その症状は末梢神経障害であるニューロパチーによるものが最も多い。痛みや知覚異常を起こす場合と起こさない場合があるが、いずれにしても強いしびれを感じるようになる。

 この痛みやしびれは手や足の末端に左右対称に現れることが特徴であり、“手袋靴下型”と表現される。また、昼間はたいしたことがなくても、夜間に症状が強くなり、歩行や入浴、マッサージなどで軽くなる。

 治療は、血糖値をコントロールすることが何よりも重要なことは言うまでもないが、痛みやしびれには血管拡張薬をはじめとして、不整脈の治療に用いられているメキシレチン(メキシチール)、神経痛の治療薬であるガバペンチノイドのプレガバリン(リリカ)やミロガバリン(タリージェ)、抗うつ薬の仲間であるデュロキセチン(サインバルタ)などが有効である。

 私の施設では、これらの薬物治療に加えて「八味地黄丸(はちみじおうがん)」や「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」などの漢方薬を処方するとともに、星状神経節ブロックや腰部交感神経節ブロックなどによって、良い治療効果を得ている。

【略歴】森本昌宏(もりもと・まさひろ) 大阪なんばクリニック本部長。平成元年、大阪医科大学大学院修了。同大講師などを経て、22年から近畿大学医学部麻酔科教授。31年4月から現職。医学博士。日本ペインクリニック学会名誉会員。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ