PR

ライフ ライフ

【朝晴れエッセー】セカンドバッグ・4月5日

 私は学生時代、剣道部の試合の団体戦では先(せん)鋒(ぽう)で出場することが多かった。どこの学校も団体戦のメンバーはほぼ固定で、同じ相手と対戦することがよくあった。

 そして私は同じ相手によく負けた。相手の得意技と私の弱点が合致しており、顧問の先生はため息で、「同じ相手に同じ技で負けている」と諦められていた。

 情けないとは思うけど、剣道で身を立てるわけじゃない。わが校はあと1勝できなくて、上位大会に進出することはなかった。部活も試合もここまでと思っていた。

 ところが大学で剣道部に入ったら、また同じ相手と対戦する可能性がでてきて、今度は勝ちたいと、はっきり思ったのだ。

 私は部活に注力するようになった。何をしたくて大学入ったの? 親の小言を励みに剣道場に通った。時代はバブルでサークル全盛だった。

 それから2年後、その機会はやってきた。先に試合場に入り待っていると、反対側に対戦相手が入ってきたが、なぜか皆、おそろいのブランドのロゴ入りのセカンドバッグを持っていた。

 後から来て相手が待っているのに、バッグをなでながら準備をして、審判にも早くと促されていた。そして試合が始まって、私たちがあっさり勝った。負けた方は談笑しながらバッグを手に手に帰っていった。

 瑛人の『香水』を聴いていたら、こんな思い出がよみがえってきた。勝負に勝った気はしないけど、試合に勝ったのはあのセカンドバッグのおかげ。バブルの青春の一ページです。

●(=さんずいにウかんむりに眉の目が貝)野令子(54) 埼玉県越谷市

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ