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東大王・鶴崎さんと富士通EDTECH事業部長が語り合う DXが変革する教育 創造性、イノベーションを生み出す人材育成

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 教育現場にデジタル化の波が押し寄せている。新型コロナウイルスを契機にオンライン授業などが定着し、学校のICT環境を打ち出した政府の「GIGAスクール構想」も動き始めた。教育はデジタルによってどう変革していくのか。東大大学院でプログラミングや数学を研究し、人気クイズ番組でもずば抜けた知力を発揮する鶴崎修功さんと、教育のDX(デジタルトランスフォーメーション)をリードする富士通ソーシャルデザイン事業本部EDTECH事業部の田中一郎事業部長が語り合った。

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いつでもどこでも誰でも学べる

田中 新型コロナを分岐点として、都心や大企業のみならず、全国で仕事や暮らしの新たなスタイルにおけるDXやサステナブル(持続可能)、その在り方というこれからの価値観への意識が急速に高まりました。なかでも教育は普遍的なテーマなので保守的な側面がある分、変革する余地が大きい分野だと考えています。そこで富士通の技術を活用し、地域や世代を超えた学びの機会の創出や、個別最適な学習内容の提供を目指しているのがEDTECH事業部です。鶴崎さんには、その第一歩として提案する地域格差解消につながる「AIによるオンライン試験不正防止システム」を体験してもらいましたが、いかがでしたか。

鶴崎 コロナの影響でオンライン試験は広がったので、まだ手探りの状態だと思っていましたが、体験してみると不正行為をしっかりと検知していて精度の高さに驚きました。

田中 AIを活用して映像や文章を解析する技術は実用化の水準に達しているので、不正行為はしっかりと検知できていると思います。いまは研究をさらに進め、(授業中の)生徒の表情から理解度を測る技術を検討しています。

鶴崎 僕も教育実習を履修し、生徒が授業内容を分かっているのかどうかを見極めるのは教師の経験や技能によるところが大きいと実感しました。しかし、AIで自動的に判別できれば、新人教師でも効率良く授業に取り組めるようになりますし、生徒の気持ちに寄り添えるようになりますね。

大学院に在籍する鶴崎さんは大学生のティーチングアシスタントを務め、試験監督も経験したという
大学院に在籍する鶴崎さんは大学生のティーチングアシスタントを務め、試験監督も経験したという
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田中 教育実習や試験監督の経験がある鶴崎さんは分かっていると思いますが、教育現場はどうしても(教師や試験監督)1人に対して生徒は複数人になってしまいます。だから、教師の目が届かない部分が出てくるんですね。その時、生徒の状態を見逃さないよう補完するのがデジタル技術を活用するメリットだと考えています。

鶴崎 不正行為を検知する機能がここまで進化すれば、オンラインでも対面と同じように試験が受けられますね。僕は鳥取県出身なので、資格試験などの会場は全国数カ所あっても(隣の)島根県に行かざるをえなくて不便を感じたことがあります。オンラインで地域に関わらず公平に試験を受ける環境が整う意義は大きいのではないでしょうか。

田中 コロナがシステム開発のきっかけになったことは間違いありませんが、教育の地域格差解消は長年の課題でした。都内在住で東大を受験するのと、地方からではスポーツの試合の(地元で闘う)ホームと(敵地に乗り込む)アウェイのような違いがあると思います。それで才能のある人材の学習機会が奪われてしまったら、日本の損失ですよね。これからは海外の学生が母国から東大の授業を受けるという発想もあるのではないでしょうか。「いつでもどこでも誰でも学べる」時代です。

 一方で、いまの手段の補完や課題解決にとどまらず、デジタル技術を活用することで生まれる「創造的・実践的に学ぶ」という新たな可能性も事業としてどんどん広げていきたいと考えています。

学びを価値に変える

鶴崎 この1年間(のコロナ禍)を振り返ると、実際に対面できないから仕方なくオンラインという部分がありました。しかし、そこから一歩進めてデジタル技術を対面の学習に生かしたり、オンラインならではの効果を発したりすると世界はより豊かになりますね。先ほどのAIを教室で学ぶ生徒の理解度の解析に使うことも一例で、教師が時間をかけて培われた知見を誰にでも伝えることができるじゃないですか。

 その上で人間は機械には難しい判断や能力をさらに磨き、デジタルに反映し、いっそうの進化につなげる好循環ができるといいなと思います。

田中 EDTECH事業部は「学びを価値に変える」ことを後押ししたいと考えています。例えば、この人材はどんなことを学んできたのか、どんな知識や能力を持っているのかというデータを収集して蓄積します。世界のどこにいっても証明でき、安心して大事なキャリアの選択に使えるよう学び・実践を可視化・流通させることで、学びの成果を仕事や社会に還元するお手伝いになるのではないでしょうか。

EDTECH事業部の田中事業部長は、生活者に寄り添い「学びを価値に変える」後押しをすると明言する
EDTECH事業部の田中事業部長は、生活者に寄り添い「学びを価値に変える」後押しをすると明言する
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鶴崎 確かに自分の適性は分かっていると思っても、正しくないこともありますよね。デジタル技術で自動的に判別してくれれば、可能性は広がるかもしれませんね。例えば、好奇心を刺激してくれる未知の領域の発見を手助けしてくれたらうれしいかな。中学生時代からプログラミングを勉強していますが、地元にいた高校生までは情報が限られ、大学院生になるまで知らない領域がありました。以前から知っていたら、学びがもっと豊かだったのではないかと思うことがあります。

田中 いま政府がGIGAスクール構想で1人1台端末の整備に取り組み始めましたが、鶴崎さんは学習にデジタル技術を活用してきましたか。

鶴崎 幼稚園時代に実家にパソコンが入り、小学校の授業内容をゲーム形式で学べるソフトで問題を解いていました。入学時には2、3年生のレベルに進んでいましたね。どんどん先取りするのが楽しくて、好きでした。

 また、(小・中学生の国際的な大会)「算数オリンピック」に出場するため、ネット上のアカデミーに入って練習問題を解いていました。中学に入ってからはゲーム好きが高じてプログラミングに興味を持ち、基本を身に付けました。もちろんいまは論文をパソコンで書き、ネット上で参考論文を探し、ノートもタブレット端末に書き込んでいます。ただ、やはり印象が大きいのは小学生時代の学習ソフト。個人学習で(授業スピードに関わらず)自分の好きなように学べたので、とても面白かったし、ありがたかったんです。

田中 EDTECH事業部でも、学びのコンテンツ制作は大きな課題だと考えています。システムや機器の開発に加え、パートナーとも連携しながら包括的な教育サービスをデジタル技術で構築していきたい。例えば、紙の教材と違って、動いている物体を説明するときに動画を使えば理解が深まりますよね。

身振りを交えて話す鶴崎さん(上段)の意見にじっくりと耳を傾け、時に笑顔をみせながら教育のDXの意義を語り合う田中事業部長(下段)
身振りを交えて話す鶴崎さん(上段)の意見にじっくりと耳を傾け、時に笑顔をみせながら教育のDXの意義を語り合う田中事業部長(下段)
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富士通本社で行われた対談は約1時間に及び、教育やクイズの話が尽きなかった
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一人ひとりに合わせて最適に学べる

鶴崎 僕がかつて楽しんでいた学習ソフトは、理科で磁石に付くものはどれですかという問題で、回答の選択肢の写真が並ぶ程度でした。しかし、いまは動画や画像も豊富に活用できる環境が整っています。あとは、中身となるコンテンツですね。

 クイズプレーヤーとして期待しているのが、問題の自動作成です。いまは僕も含め個々人がネタを探し、確認して、文章にどう落とし込もうかと経験で培った”勘”に頼って考えています。しかし、クイズも学習教材も、AIで自動的に凝った文章題などをつくる世界がきたら面白いなと思います。

田中 しかも、人間には思いつかないような問題もできる可能性がありますね。

鶴崎 個々の回答者のレベルに合わせて、やや難しい問題を出題することもできますよね。いまの試験は一律の問題ですが、デジタル技術を使えば個々人の学習到達度に合わせた設問もできるのではないでしょうか。

田中 「一人ひとりに合わせて最適に学べる」。いわゆるアダプティブラーニングは教育業界全体の課題です。EDTECH事業部はデジタルを活用し、鶴崎さんが通常は小学校6年間の授業内容を学習ソフトで短期間のうちに学んだように最適な環境を提供したい。学びそのものをサポートする「ラーニングパートナー」を目指し、そのための土台として学びのデータの収集する入り口にやっと立てたところだと思います。

鶴崎 AIやEdTechといういわゆるバズワード(流行語)を使うサービスには理念先行のイメージがあったので、やや懐疑的でした。しかし、EDTECH事業部のシステムに実際に触れ、背景にある考えを聞くことで教育に役立つデジタル技術の可能性を感じました。より普及してほしいし、僕もそこに関わっていけたらいいなと思いました。

田中 創造性に富みイノベーション(技術革新)を加速する人材の輩出を富士通のデジタル技術をフル活用して支援していきたいと考えています。きょうは鶴崎さんにオンライン試験不正防止システムの精度を評価してもらい第一歩は間違っていなかったと確信しました。学びを止めない・そして新たな学びをつくる、いまも新たなサービスの整備を進めているので、みなさんに活用し、親しんでほしいと思います。

Fujitsu EdTech Service の詳しい情報はこちら

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鶴崎 修功(つるさき・ひさのり) 1995年4月19日、鳥取県生まれ。東大大学院にて数学やプログラミングを研究するほか、2016年にクイズ番組「東大王」に出演し、クイズ番組初出場で初優勝の快挙を成し遂げた。現在も、東大王チームとしてレギュラー出演中(TBS、水曜よる7時)。

田中 一郎(たなか・いちろう) 1992年入社後、流通業、通信事業者向けのシステム開発を担当。2000年以降、携帯向け”着うた”、パシフィックリーグ他スポーツ中継など映像・音楽のインターネット配信を基盤とするデジタルサービス構築に従事。それら経験とPC教室向けパッケージ「瞬快」の技術を基礎として、今期より”新たな学びのオンラインサービス”を事業として推し進める。

提供:富士通株式会社

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