PR

ライフ ライフ

テレビ兼営との決別 求められるラジオの自立

前のニュース

 テレビとラジオを兼営している放送事業者が、ラジオ事業を分社化する動きが加速している。昭和26年にラジオ局として放送を開始した毎日放送(MBS、大阪市)も4月、ラジオ事業を独立会社として分社化する。インターネットメディアの攻勢で広告収入が落ち込み、厳しい環境にあるラジオ。自立を求められ、真価が問われている。  (渡部圭介)

反転の好機にできるか

 「非常に厳しいと思います」

 分社化後のラジオ事業を担う新会社「MBSラジオ(Mラジ)」を取り巻く現状について、社長に就任予定の浜田尊弘さんは率直に語った。

 民間放送の収入の柱はコマーシャル(CM)収入だが、ネットメディアの台頭のあおりを受けている。

 昨今、ラジオの生命線になっているのは、CMの一種である、パーソナリティーらが商品を紹介する通信販売のようなコーナー。ただ、「これからは、これも頼りになるか分からない。それがラジオ業界の現状だと思っています」と危機感を隠さない。

その他の写真を見る(1/2枚)

 さらに、これまではラジオのスタッフの間にも稼ぐ力のあるテレビ事業への依存もあった。「そこまで無理をしなくていいという空気があった」と反省する。

脱ラジオ掲げて目指すものは

 ただ、分社化を反転の好機とも捉えている。「ラジオはフットワークの軽いメディア。みんなで『やろうよ』といったことがすぐにできる」とラジオの力を信じる。MBSは昭和40~50年代に笑福亭鶴瓶さんや明石家さんまさんらを起用した「MBSヤングタウン」で一世を風靡(ふうび)するなど、長くリスナーの心をつかんできた経験がある。

 培ってきたコンテンツ力を生かす一方、これからの方針にあえて“脱ラジオ”を掲げる。「例えばこれまで番組関連のイベントはファンサービスという面があった。これをどうビジネス化できるか、既成概念にとらわれず、とことん考え抜くのが脱ラジオ」と説明する。

 手応えを感じた試みもある。一昨年までは、タレントの北野誠さんが司会を務める怪談番組の特別企画を動画投稿サイト「YouTube(ユーチューブ)」で無料配信していたが、昨夏から有料化。戸惑うリスナーから批判もあり、社内でも慎重論はあったが、「非常に多くの方にお金を払って聴いてもらえて、けっこうな収益になったんです」。

 ネット配信では電波の送信範囲に縛られず、全国各地に自局の番組を届けられる。ネットメディアがラジオ広告を侵食する一方で、ラジオ局にとってネットは大きな武器になると実感した。

 ただし、浜田さんは「お金に変えるために番組を作り、売るのではない。関西に根ざした番組を作り、その世界観への共感を全国に広げる意識が大切です」と強調する。「それであれば、魂を売らずに番組を売れるんちゃうかな」と表情を緩めた。

 ラジオの真価を知るスタッフたちの矜持(きょうじ)が、ラジオが再び輝く時代を引き寄せる鍵になるはずだ。

加速する分社化

 ラジオとテレビの兼営を解く分社化。すでに平成13年に東京のTBS、25年に名古屋の中部日本放送で完全分社化したほか、在阪局でも朝日放送が30年に「朝日放送テレビ」と「朝日放送ラジオ」に分けた。毎日放送はラジオの放送免許を4月、新会社「MBSラジオ」に移す形で分社化する。

 兼営を解く背景には放送局を取り巻く競争環境の変化がある。インターネット上で動画や音声配信サービスが次々と生まれ、民間放送を支えてきたコマーシャル収入は、ネットメディアに削られ続けている。

 分社化は目まぐるしく新たな競争相手が生まれる市場で、ラジオとテレビ双方の経営判断の迅速化をはかるとともに、相互の依存関係を薄め社員のコスト意識を高める狙いがある。

「ラジオ」ここにあり

 「ラジオ単体で黒字にならない中、テレビ事業の方もお尻に火がついてきたのは否めない」。毎日放送の分社化について、同志社女子大の影山貴彦教授(メディアエンターテインメント論)はこう分析する。

 毎日放送の昨年度の決算によると、CMなどの売り上げはラジオが約30億円、テレビが約518億円。ラジオが前年度比1億円余りの減少に踏みとどまったが、テレビは同36億円減だった。

 かつて同局でラジオ、テレビの番組制作に携わっていた影山教授は「ラジオのスタッフは、お金は生み出さないが面白い番組を作っている自負から、テレビが何とかしてくれるだろうという意識があった」と振り返る。また長年、テレビがラジオを支えた背景にも、ラジオを大切にする社風を挙げる。

 象徴が今月で22年の歴史に幕を閉じたテレビの情報番組「ちちんぷいぷい」。温かな空気感を大切にしてきた番組初代司会の角淳一アナウンサー(当時)は冒頭、「角淳一です。あなたはどなたですか」と述べていた。

 「『皆さん』ではなく『あなた』と個人に呼びかけるのは、リスナーに寄り添うラジオの名残で、毎日放送の伝統のようなもの」と影山教授は話す。古巣に対する思いも込めながら、「コロナ禍で存在が見直され、追い風は吹きかけている。すぐにお金を生み出すのは難しいだろうが、『ラジオ、ここにあり』という姿を見せつけることが大事」と話した。

次のニュース

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ