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大和ハウス杯十段戦開幕 特別記念対談 芝野虎丸十段×芳井敬一社長

 芝野虎丸十段に許家元(きょ・かげん)八段が挑む囲碁のタイトル戦「大和ハウス杯 第59期十段戦」(産経新聞社主催)の五番勝負第1局が3月2日、大阪商業大学(大阪府東大阪市)で開幕。第2局は3月24日、大和ハウスグループ施設「Hotel&Resorts 長浜」(滋賀県長浜市)で開催されることも決まった。

大和ハウス杯 第59期十段戦の概要はこちら

対局に先立ち、今期から特別協賛する大和ハウス工業(本社・大阪市)の芳井敬一社長と、芝野十段が記念対談。新型コロナウイルスの感染拡大で、暮らしや社会が大きく変化する中、この困難な時代をどう乗り越えていけばいいのか、そして十段戦への思いや勝負における哲学について語った。(聞き手 産経新聞東京本社文化部長 酒井孝太郎)

芳井社長(右)と芝野十段の対談は和やかな雰囲気で行われた 東京都千代田区の大和ハウス工業東京本社にて
芳井社長(右)と芝野十段の対談は和やかな雰囲気で行われた 東京都千代田区の大和ハウス工業東京本社にて
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「雨の日には、雨の日にできることを」(芳井)

「ネット中継の増加などプラスもある」(芝野)

--特別協賛に至った経緯を

芳井 弊社の創業者、石橋信夫が、「芸術と文化は大事」ということばを残しています。そうした理念を引き継いできた経緯があり、囲碁に関しては、弊社の大阪本社を子どもたちの囲碁イベント会場に利用いただいてきました。また、社員や先輩にも囲碁の愛好家が多く、今回、特別協賛できることを光栄に思っています。

芝野 大和ハウス工業さんをはじめ、多くの方が大会を支えてくださっていることについては、日ごろから感謝しています。

--今回は新型コロナウイルス禍での開催となります。世の中が混沌とした状況で、社会は大きく変化しています。芝野十段も、さまざまな制約の中、苦労があるのでは

芝野 マイナス面としては、アマチュアの方の大会や、自分の関係するイベントが中止になってしまってとても残念です。一方でプラス面もあり、インターネットでの中継が増えたのはよかったと思います。あと家にいる時間が増えたのですが、個人的には一人でいるのが好きなので、それもよかったな、と。

--芳井社長は企業のトップとして今、この苦難の中で、どのような舵取りをしているのですか

芳井 われわれは単一の事業をしているのではなく、幅広い事業のポートフォリオを持っています。オーケストラにたとえると、良い音が出ている楽器と、少し苦労している楽器を合わせることで、一つの音楽を奏でるように経営をしています。当然、プラスとマイナスの両方があるのですが、絶対にマイナスだけが勝つことはありません。確かに、晴れた日には、いろいろと事業展開して業績をさらに伸ばすことができますが、一方で雨の日には、組織であったり、足元であったり、いろいろなことを見直すことができて、それがまた次の強みにつながります。グループ会社を含めたチームの全員に、こうしたことをうまく伝えていくことが大切だと思っています。

芳井社長に「無心」と揮毫した色紙を渡す芝野十段
芳井社長に「無心」と揮毫した色紙を渡す芝野十段
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「人生に『飛び級』はない」(芳井)

「負けた碁を検討して学ぶ」(芝野)

--芳井社長は、大学卒業後、別の会社に入った後、人生観が変わるような体験があって大和ハウス工業に入社したそうですね

芳井 もともとラグビーをやっていたのですが大学卒業後、神戸製鋼の実業団チームに入りました。そこで思い知らされたのは、「こんなすごい人がいて、こんなに練習するんだ」ということ。この差は縮まらない、と思いました。そんな中、交通事故にあい、何もできず、ずっと病室の天井を見続けてシミの数を数えていました。そして、もう一度人生をリスタートしようと、大和ハウス工業に入社したのが32歳。入社して感じたのは、非常に平等な会社で、努力が報われること。それがうれしかった。人生に飛び級はありません。あの事故があったからこそ、今の自分があると思っています。

芝野 人生の飛び級…それが何をさすかは自分には、まだはっきりわかっていないですが、おっしゃるように、1つ1つ積み上げていくしかないのかな、と思います。

--芝野十段の場合、常に世間からは勝つことを求められるといったプレッシャーがあるのでは

芝野 成績を出すにつれて注目をされることが多くなってきましたが、もともと自分は、負けてもしょうがないかな、と気にしていないところがあります。負けたらそれも実力、とあきらめはつくかなという感じです。

芳井 負けから学ぶことは多いですね。私は営業時代に他社との競争に負け、受注できなかった物件の地鎮祭を見たことがあります。本当はうちがやっているはずなのに…。 

(※地鎮祭…土木工事や建築などで工事を始める前に行う儀式。一般には神を祀って工事の無事を祈る儀式。)

芝野 それは囲碁でも言えることで、勝った碁よりも負けた碁をみんな検討しています。そういうところは通じる部分もあるのかな、と思います。

「リセットキー持つことが大切」(芳井)

「ペットと遊んでリフレッシュ」(芝野)

芳井 社員によく言うことがあります。リセット上手は仕事上手、と。自分を上手にリセットできる人は仕事もうまくいく。そのリセットキーを持っておいてください、と。たとえば私の場合、音楽を聴いたり芝居を観たりすることがそれです。芝野十段は何かリセットキーを持っていますか?

芝野 家でイヌ1匹とネコ2匹を飼っているのですが、対局の後家に帰って、わちゃわちゃすると、すっきりします。

芳井 なるほど。ペットと遊ぶことで、きょうのことをきれいに忘れて、また新しい気分になるのですね。

--今回の十段戦は、「令和の三羽烏」とも称される若手棋士のうちの2人の対決となります。関心度も高いですね

芝野 対戦相手の許八段は、年齢も近いですし、これからたくさん戦っていく機会もあると思います。気が抜けない対戦相手です。大変ですが、力を出し切ってよい碁を打てたら、と思います。

芳井 負けから学ぶことも大切というお話が出ましたが、勝ち続ける難しさを味わうのもまた、すごいことだと思います。ぜひ、がんばってください。

(本文中敬称略)

【プロフィール】
よしい・けいいち 昭和33(1958)年、大阪府生まれ、62歳。中央大文学部卒。高校時代からラグビーを続け神戸製鋼所グループで実業団の選手として活躍した後、けがを機に退社。平成2(1990)年、大和ハウス工業入社。海外事業部長、営業本部長、専務執行役員などを経て平成29(2017)年11月から現職。

しばの・とらまる 平成11(1999)年、神奈川県相模原市生まれ、21歳。平成26(2014)年9月、14歳でプロ入り。令和元(2019)年には史上最年少の19歳11カ月で七大タイトルの一つ、名人を奪取。その後王座、十段を奪い、20歳7カ月で最年少三冠達成。芝野龍之介二段は兄。

本記念対談は、感染症対策を徹底した上で行いました。

提供:大和ハウス工業

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