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【正論4月号】匿名対談 現役学者が告発「軍事研究禁止の実態」

日本学術会議の事務局が入る建物と看板=東京都港区(鴨川一也撮影)
日本学術会議の事務局が入る建物と看板=東京都港区(鴨川一也撮影)

 ※この記事は、月刊「正論4月号」から転載しました。ご購入はこちらをクリック

 A 私はとある国立大学の工学部で、センサーの研究をしています。センサーとは、様々な物質を検知して、それを知らせたり、物質の含有量などを計測する機器です。原理は、物理学に基づくアプローチもあれば、化学的に計測する手法もあります。例えば、皆さんは病院で血液中の糖分濃度を測定したことはありますか。あれは糖分に対して化学反応を起こす酵素を使って、化学反応が起きた時に発生する電子を検知し、濃度を測定しているのです。

 かつて血液中の糖分濃度を測ることは、とても面倒でした。ですが、センサーが開発されてからは、血液が一滴あれば測れるようになりました。糖分だけでなく、測定したい対象物質は実に千差万別で、そのたびにセンサーの原理も変わります。多種多彩なセンサーが実用化され、センサーを駆使した大がかりなシステムづくりも研究しています。

 B 私も某国立大工学部で、エンジンに関係する熱・流体力学の研究を行っています。燃料が持つ熱エネルギーからどう効率よく動力に変換するか。基本はそういう話です。様々なテーマがあり、最先端のエンジンへの応用も視野に入れています。それは燃料の燃焼方法を従来とは大きく変えることで、パワーとエネルギー効率の大幅な向上が期待できる技術です。また、高温になったエンジンを効果的に冷却することも重要な課題の一つで、世界的な競争が繰り広げられています。例えば米ボーイング社も音速の五倍(マッハ五)での飛行を実用化する、と発表していますが、日本の同じ分野の基礎研究は、その課題解決に応用できると考えています。

 A 政府の科学技術研究費などを獲得しましたか。

 B 科研費に値する価値ある研究だと思っていますから、獲得を目指して頑張っています。

 A 二〇〇一年九月十一日の米同時多発テロ事件以降、世界では「テロとの戦い」が叫ばれるようになりました。冷戦下の戦争までは軍隊が互いに睨みあって武力衝突…というイメージでした。ところが、テロとなると、全くそうではありません。劇場やターミナル駅、雑踏など、いつどこで何が起こるか、わからない。そうした恐怖があります。バイオテロ、毒性の高い化学物質を使って無辜の市民が巻き込まれ、一瞬で大量の命が奪われてしまう。

 私は、そうしたニュースを見るたびに、研究者として毒物を検知できるシステムを構築すれば、被害を抑制できないか、などと考えていました。ちょうど、防衛装備庁が「安全保障技術研究推進制度」の募集を始めるので、それで共同研究者を決めて研究資金を確保すべく、書類を整えました。ところが、書類も揃った段になって、大学当局者に呼び出されてしまったのです。

 B 何と言われたのですか。

 A それが「出すな」とも「ダメだ」とも決して言わないんですよ。「出すのか」「とにかく考え直してほしい」「見合わせてほしい」と。びっくりしました。どうやら私の研究を、学術会議が提唱する「軍事研究の禁止」に認定したというより、「軍事研究だ」と受け止められて批判されたくない、といった方がいい。あからさまにダメと言わないのもそのためで、そんなことが表沙汰になれば「学問の自由」を侵害する問題だとは認識している。そこで「お願い」によって私の判断という形にして申請を取り下げさせようとしたのだと思います。

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