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【本郷和人の日本史ナナメ読み】歴史研究者に向くタイプ(上) 面白がるセンスは不可欠

北畠政郷像(模本、東大史料編纂所蔵)
北畠政郷像(模本、東大史料編纂所蔵)
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 ぼくは研究者の第一の資質は、旺盛な知的好奇心だと思っています。今までとは毛色の違う資料が発見されたり、新しい解釈が提起されたり、目から鱗(うろこ)の新説が発表されたりしたときに、まずはその「面白さ」に気づけないようではダメ。それから、あの大学の業績になっちゃうなとか、あいつの方が先に教授になるな、と算盤(そろばん)をはじいているようでもいけません。区々たる利害を超えて、「おお!これは面白い」とワクワクしないようでは、研究者に向いていないんじゃないでしょうか。負けず嫌いなのは悪いことではないですが。

 その意味で、ぼくは職場の同僚(ただし先輩に限る)に、今よく覚えている限りで3度ほどがっかりしています。一つは軽いところで、Aさん。ぼくは大分市で、源頼朝の下文(くだしぶみ)の正文(写しでなく本物の文書という意味)らしきものを見つけました。下文というのは頼朝の意思を伝える格の高い書式で、頼朝の右筆(ゆうひつ)(文書作成に携わる吏僚(りりょう))集団の誰かが書き、頼朝が花押(かおう)(サイン)を据えたもの。写真を撮って帰京し、比較検討したところ、紛れもなく頼朝の下文、とされる文書の中に筆跡が同じものがありました。

 大分市の下文は、頼朝の右筆の手になるものだ。ぼくは興奮し、たまたま近くにいたAさん(長年ぼくの上司を務めてくださった、現放送大学教授の近藤成一先生ではありません。念のため)に話したところ、筆跡の鑑定は慎重にやらねばならないとか何とか、言い始めた。こんなに明瞭なのに、何で今さら分かりきった原則論なんだ、と落胆しました。

 次にBさん。兵庫県に安積(あづみ)文書という魅力的な文書群があります。播磨国の有力武士、安積氏が大切に保存していた文書で、南北朝時代のもの、赤松氏関係のものが含まれる。それをいじっていたときに、あれ?と閃(ひらめ)くことがありました。徳川光圀(みつくに)に仕えて彰考館の総裁になった学者に安積澹泊っていたよな。読みは「あさかたんぱく」とされているけれど、もしかしたら「あづみ」じゃないのかな?だって彼の通称は覚兵衛で、水戸黄門の「格さんこと、渥美格之進」のモデル。だったら、「あづみたんぱく」の可能性が高いんじゃないかな。

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