PR

ライフ ライフ

描かれた風景に遊ぶ…コンスタブル展の魅力

ジョン・コンスタブル「ウォータールー橋の開通式(ホワイトホールの階段、1817年6月18日)」 1832年発表、油彩/カンヴァス、130.8×218.0センチ、 テート美術館蔵 (C)Tate
ジョン・コンスタブル「ウォータールー橋の開通式(ホワイトホールの階段、1817年6月18日)」 1832年発表、油彩/カンヴァス、130.8×218.0センチ、 テート美術館蔵 (C)Tate
その他の写真を見る(1/3枚)

 19世紀イギリスを代表する画家、ジョン・コンスタブル(1776~1837年)。ロンドンのテート美術館所蔵作品による展覧会が三菱一号館美術館(東京都千代田区丸の内)で開かれている。風景画の重要作品がそろい魅力を堪能することができる。  (文化部 渋沢和彦)

研鑽の日々

 コンスタブルの作品の魅力は生き生きとした自然のある風景画だ。大作の前に立つと絵の中に入り込んだような感覚になる。晩年の「ヴァリー・ファーム」もそうした作品だろう。生命感のある大きな樹木がそびえ、川では小舟をこいで遊ぶ人たちがいる。空には微妙に変化する色彩の雲がもくもくと現れ、空気感が伝わってくる。趣のある邸宅は、実際には絵のような大きな館ではなかったという。

 見たままではなく、多少の脚色を加えられた。コンスタブルは1821年から翌年にかけて雲の研究に勤しみ、夏の住まいとして借りていたロンドン郊外のハムステッドで、100点以上の習作を描いていた。しかも裏面に日時や気候、風向きも記録していたほど真剣に取り組んでいた。「ヴァリー・ファーム」は、研鑽(けんさん)した空の表現がいかんなく発揮された作品といっていいだろう。

 コンスタブルは故郷・サフォーク州の田園風景をはじめ、ソールズベリー、ブライトンなど親しい人たちと過ごした国内の思い入れのある地を好んで題材にした。日本では、同時代の画家のジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775~1851年)がよく知られるが、英国ではターナーと並ぶ風景画家として国民的な人気があり、テート美術館には常に大作が展示されている。

移り変わる都市

 コンスタブルが活躍した時代は産業革命が始まり、1814年には蒸気機関車が開発され、やがて旅客鉄道が開通。巨大な橋などが建造されるなど社会が大きく変わっていった。「ウォータールー橋の開通式(ホワイトホールの階段、1817年6月18日)」は、そんな時代の熱気を伝えている名作。画面の中には、陽光を浴びて輝く建物、祝砲の煙や群衆など活気あふれる都市を明るい色彩で描出した。橋の開通式を見たコンスタブルは、数点のデッサンを残していたが、その後、構想を練り完成までに15年の歳月を費やした。

 1832年の「ロイヤル・アカデミー展」に出品されたこの作品には面白いエピソードがある。同展にはターナーの海景画「ヘレヴーツリュイスから出航するユトレヒトシティ644号」も発表された。展覧会の直前の最後の手直しが許される日に、ターナーは並んで展示されたライバルの絵に刺激を受け、最後に赤い絵の具でブイを海に描き入れた。コンスタブルの作品よりもサイズは小さく、寒色系でまとめられていたため、見劣りしてしまうと思ったのだろうか。確かに、コンスタブルの作品は明るい色彩で包まれ華やかだ。展覧会で発表された最大の風景画は、巨匠、ターナーをも恐れさせるだけの作品といえるだろう。

風景画の地位引き上げる

 その問題となった2作品が今回、東京の地で一緒に並んだ。2009年、ロンドンのテート美術館で開催された「ターナー展」で再会したことがあったが、ロンドン以外では今回が初となる。それもターナーの絵を日本の美術館が所蔵していたおかげでもある。

 三菱一号館美術館の杉山菜穂子主任学芸員は「すばやい筆で厚く絵の具を塗りつけたり、白色の斑点を置いたりして大気や光、そして水面への反射を描き出した表現は、19世紀後半のパリで印象派の画家たちが発展させた現代的なヴィジョンを予兆しているかのようである」と話している。

 当時の英国美術界では肖像画の地位が高かったが、ターナーとともに風景画の地位を質の高い作品で引き上げたのがコンスタブルだった。それゆえ重要画家なのだ。本展はテート美術館からコンスタブルの周辺の画家を含め60点が来日、日本国内から集めた作品を含め85点で構成され、見応えのある本格的な展覧会となっている。

 5月30日まで、月曜休館。一般1900円。入館は日時指定制。サイトで販売。問い合わせはハローダイヤル(050・5541・8600)。

 ※展覧会会期などが変更になる場合もあります。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ