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【美村里江のミゴコロ】自分の本音と向き合う時間

 「エッセーを書く」という行為は、ほとんどの人が学校で「作文」という形で経験していると思う。しかし現在、ソーシャルメディアなどによる短文文化が根を張り、なかなか1千文字以上の文章に自ら取り組むことは少ないだろう。

 私は現在4つの連載枠を頂戴し、書評欄でもエッセー要素を求められることが多く、何しろこの「ミゴコロ」が週1回の掲載である。それ以外に単発の依頼も頂くので、通年エッセーを執筆中だ。

 役者業と並走でエッセイスト16年目だが、いまだに書く度に「エッセーはいいなぁ」と思う。ある日の風景が、自分の心が、不透明だった時間が、居所を得てスッと落ち着き、安(あん)堵(ど)感が満ちて視界が開けてくる。

 さて、そんな「書くの大好き人間」の私だが、「読むの大好き人間」でもある。人(ひと)様(さま)の書かれた文章は格別の味わいで、会ったことのない人ほど想像が膨らむ。そのため、産経新聞社主催の「約束(プロミス)エッセー大賞」の審査員を今年も務めることができ、とてもうれしかった。

 昨年の初参加時に驚いたのは、「10代前半からほぼ90代まで幅広い年代が肩を並べ」「全体のレベルが高く」「悲喜こもごも多様な内容」という点で、審査のはずが純粋に読者として夢中になってしまった。

 読了後にひと呼吸置き、コーヒーを飲みながら遡(さかのぼ)る順番でもう一度通読。さらに翌日にもランダムな順序にして3度目を読み、全ての審査を終えた。なんとも楽しい、ぜいたくな時間だった。

 作家のエッセーアンソロジー本も好きだが、プロの文章は技術を駆使し、より面白くなるよう工夫が施されているのを感じる。

 応募作群はそれとは違った強い魅力がある。もちろんそれぞれに工夫もされているが、それらを軽々と超え、どのエッセーからも筆者の“人生そのもの”が迫ってくるのだ。まさに「渾(こん)身(しん)」という言葉が浮かんでくる。今年も力作ぞろいで、さまざまな約束の姿に心を揺さぶられ、元気を頂いた。

 戸惑いの多い時勢の今、エッセー執筆で自分の本音を整理してみる時間はいかがだろう。肩肘張らず素直に書いてみると、自分自身と出会い直すような不思議な感覚も湧いてくる。

 もし思うように書けなくても、紙に載せた文字数の分、心が少し軽くなる。エッセーにはそんな効能があると私は思う。

【プロフィル】美村里江(みむら・りえ) 昭和59年、埼玉県出身。女優としてドラマや映画に多数出演する一方、エッセイストとしても活動。平成30年に「ミムラ」から改名。著書に『たん・たんか・たん』(青土社)など。NHK大河ドラマ「青天を衝け」に徳信院役で出演。

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