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【TOKYOまち・ひと物語】受刑者に手紙で社会復帰支援 五十嵐弘志さん

「受刑者は同じ人間。寄り添っていくことが大切」と話すNPO法人マザーハウスの五十嵐弘志理事長=15日、墨田区菊川(橘川玲奈撮影)
「受刑者は同じ人間。寄り添っていくことが大切」と話すNPO法人マザーハウスの五十嵐弘志理事長=15日、墨田区菊川(橘川玲奈撮影)

 服役3回、計約20年を塀の中で過ごした五十嵐弘志さん(57)は元受刑者でありながら、ボランティアとともに全国の刑務所にいる受刑者との文通や元受刑者の就労支援など、社会復帰を手伝うNPO法人「マザーハウス」(墨田区菊川)の理事長を務める。「受刑者も同じ人間として大切に接することが、更生につながる」と語る。(橘川玲奈)

 受刑者との文通の取り組みは、ボランティアと真心で手紙を交わすことから「ラブレタープロジェクト」と名付けた。関わる受刑者は全国に約800人。ボランティアは一般の老若男女で450人ほどが参加している。個人情報保護のため、ボランティアはペンネームを用い、両者はNPOの事務所を経由して手紙を送り合う。

 手紙は、日常の出来事や趣味などありふれた事柄から、受刑者自身の反省の思いまで内容は多岐にわたる。手紙のやりとりは月に300通以上に及ぶという。

 その他にも、元受刑者を雇い、コーヒーの販売やパソコン修理などを行い社会復帰を支援している。活動はバチカンにも伝わり、令和元年に来日したローマ教皇フランシスコに謁見した。

 「殺人以外はいろいろやりましたよ」。自身も詐欺や私文書偽造、脅迫などの罪で3度服役し、通算で20年を刑務所で過ごした。

 契機となったのは3回目の服役前。警察署の留置場で一緒だった日系ブラジル人との会話がきっかけでキリスト教を知った。服役中も修道女や、後に身柄引受人となるキリスト教の弁護士との手紙のやりとりを通じて回心した。

 その中でも、修道女から教わったマザー・テレサの言葉に心を打たれた。ノーベル平和賞を受賞したマザー・テレサは「最も貧しい人のため」という言葉をモットーに働いたという。

 日本で最も貧しいところはどこか。考えると自身も過ごす刑務所が思い当たった。「刑務所は誰からも相手にされない孤独な場所。出所しても社会からはじかれる」。出所後は受刑者や元受刑者のために働こうと決意した。

 平成23年12月に出所し、翌年4月にマザーハウスを立ち上げた。だが当時は出所直後だったため「欠格事由」に該当し、NPO法人の認証が受けられたのは26年になってからだった。

 忘れられない受刑者がいる。3度目の懲役で高齢受刑者の介護を命じられた。そのうちの1人は無期懲役の判決で40年近く服役している高齢のTさん。頑固で気に入らないことがあると机をたたく人だった。入浴やトイレ介助は初めてで戸惑ったが「これも最も貧しい人のため」と思い、懸命に取り組んだ。

 自身の満期が近くなったころ、刑務官に呼ばれた。「Tがお前に残ってほしいと言ってるぞ」。普段は口の悪いTさんだが、感謝されていると知り、うれしかった。

 今もボランティアを通じて塀の中のTさんと文通を行っている。昨年は10万円の特別定額給付金の一部を、五十嵐さんの子供のために送ってくれた。「優しい気持ちがあるんだと泣けてきました」

 「犯罪を擁護するつもりはない。だが受刑者は同じ人間。寄り添っていくことが大切だと思う」と語った。

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