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【書評】『FUTURE EDUCATION!』教育新聞編

□『FUTURE EDUCATION! 学校をイノベーションする14の教育論』

■自由で幸せに生きるため

 今、公教育の誕生以来150年ぶりの「構造転換」が起こり始めている。そのポイントは、学校を、決められたことを決められた通りに勉強したり行動したりすることが中心の場から、子供たちが自分たちなりの問いを立て、自分たちなりの仕方で、自分たちなりの答えにたどり着く、また、自分たちの学校は自分たち自身の手で作り合っていく、そんな場にすることにある。

 本書には、そうした構造転換を推し進めている中心的な人物たちによる、14の教育論が収められている。

 例えば、中高の校長を務める日野田直彦氏は次のように言う。「私はどこであっても、業務命令は一つしか出しません。それは『チャレンジしましょう』です。教員や生徒がチャレンジして失敗したら、校長である私の責任、成功したら教員や生徒のおかげです」

 映画「みんなの学校」でも知られる、大阪市立大空小学校の元校長、木村泰子氏も次のように言う。「多くの学校が、過去の悪しき文化を『捨てたくない』『なくしたくない』と考えるのは、教育活動の主語が教員になっているからです。(略)全ての主語を子供に変えれば、学びは一八〇度変わります」

 もっとも、本書の中には、「全ての主語を子供に変える」こととは一見反対に見えるような実践紹介や提言もある。公教育の構造転換が勢いよく起こっているからと言って、決して一枚岩として動いているわけではないこともよく分かる。

 昨今の教育改革に、重要な問題提起をしている論考もある。教育学者で高知県土佐町議の鈴木大裕氏は、従来の学校のあり方を変えていくに際して、公教育の市場化、民営化が進み、格差がさらに拡大してしまいはしないかと危機感を訴える。

 それぞれに立場の違いはあれど、すべての論者に共通しているのは、子供たちの「学習権の保障」である。教育を、社会の要請という観点のみから変えるのではなく、これからの時代を生きる子供たちが、自由で幸せに生きられる力を必ず育むためにこそ変えていく。それはどうすれば可能なのか。本書をたたき台として、議論が盛り上がることを願う。(岩波書店・1800円+税)

 評・苫野一徳(熊本大学准教授)

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