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【聞きたい。】小林省太さん『松がつなぐあした』 苗木づくりからの生活再建

小林省太さん
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□『松がつなぐあした 震災10年 海岸林再生の記録』

 「被災して会えなくなった人たちが苗木づくりで畑や事務所に集まる。意見の違いは出ても、ある種のコミュニティーができたのは大きい」。東日本大震災の復興で海岸林再生のプロジェクトを追い、奮闘する人々の物語を記録した。

 宮城県名取市の海岸線でマツ林が流された集落「北釜」。プロジェクトを担うのは公益財団法人「オイスカ」(東京都杉並区)。新聞記者時代の震災取材の流れでオイスカのアドバイザーとなり、機関誌に折り込む形で活動報告を始めた。

 ただ、あくまでも「外部の目」に徹する。被災の話も伝えるため、住民と会うことを優先した。農家の人とは翌日に出荷作業のない日に3人ぐらい集まってもらい、居酒屋で話を聞く。「だんだん心を開いてくれました。でも話し出すとつらい感情もよみがえる」。10年たっても収まるようなものではないと感じた。

 オイスカは海外でのマングローブの海岸林再生で実績がある。震災直後から地元との調整に奔走した。防災林再生にマツの特性や海辺の環境への不安から異論も出たが、苗木づくりから取り組み、生活の再建につなぐ発想が計画を動かす。

 「家にいてもそんなに笑うことはないから、といわれると切ないが、苗木づくりで語らいの場ができた。国や自治体の事業とは違うところかもしれません」

 ボランティアも全国から延べ1万1千人が駆けつけた。「マツは成長という目に見える変化があり、復興に関わっている感覚が得られる」と思った。その援軍もあって72ヘクタールの土地に37万本のマツの苗を植えた。

 「順調に育っていることが一番の成果だが、まだ始まったばかり。成長すると窮屈になり、減らしていく作業がこれから主になる。松くい虫が入ると全滅の可能性もある。目で見て守っていくことが必要です」。未完の物語は震災10年を迎えて新たな章に入る。(愛育出版・1300円+税)

 蔭山実

【プロフィル】小林省太

 こばやし・しょうた 昭和30年、東京都生まれ。東京大学文学部卒。日経新聞社の記者としてウィーン支局長、パリ支局長、文化部長、論説委員を歴任。定年退職後の平成28年、オイスカのアドバイザーに就任。

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