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【ビブリオエッセー】ワナワナふるえた指先の記憶 「太陽の季節」石原慎太郎

 65年前、一大センセーションを巻き起こした小説である。石原慎太郎さんはこの型破りな小説で芥川賞を受賞、弱冠23歳だった。当時は社会問題にもなった作家の代表作を改めて読み、あのときの興奮を思い出した。

 物語はいたってシンプルだ。高校の拳闘部で汗を流す津川竜哉はある日、悪友たちと銀座へ繰り出し、通りかかった3人組の女性たちをナンパする。その日を契機に3人の中のひとり、英子との交際が始まった。

 時とともにふたりの仲は深まり、やがて英子はみごもるのだが、問題は竜哉らの行動と言動である。高校生にもかかわらず、すれっからしのチンピラまがいのふるまいに驚いた。

 あきれた不良少年たちだ。キャバレーやクラブに当たり前のように出入りして酒を飲み、狼藉をはたらく。喧嘩に女、賭博など自由奔放。英子の真心も弄ぶ。揚げ句に英子の所有権を兄に売り渡すのだから唖然とするが、著者は彼らの行状を批判的にではなく、内側から実況中継するような筆致とテンポで描いていた。

 私が芸能雑誌に掲載された『太陽の季節』を初めて読んだのは17歳の多感な思春期だった。迫力ある描写にページをめくる指先がワナワナふるえていたのを今も覚えている。ヨットが浮かぶ湘南の海に憧れ、見たこともないぜいたくな生活を思い描いた。

 そして慎太郎さんは最も気になる存在になった。数年後、中之島公会堂のシンポジウムで初めて本人を見て感激したことも思い出す。『狂った果実』や『錆びたナイフ』など弟、裕次郎さんが主演した映画もことごとく見た。

 今や何でもありのご時世になったが、現在の若者たちがこの小説を読んで、ワナワナ現象が起きるかどうか、いささか興味がある。

 大阪市西成区 三好克彦 82

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