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【最後の砦 奮闘45日間】院内クラスター100人超、地域の基幹病院はどう戦ったか 富士市立中央病院

新型コロナウイルスの影響で今も面会禁止が続く。テントは入院時の検査に使われている=静岡県富士市の市立中央病院(岡田浩明撮影)
新型コロナウイルスの影響で今も面会禁止が続く。テントは入院時の検査に使われている=静岡県富士市の市立中央病院(岡田浩明撮影)
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 1月までに新型コロナウイルスの院内感染者が計130人出て、静岡県内最多のクラスター(感染者集団)となった富士市立中央病院(富士市)。「有事」をどう乗り切り、教訓として何を得たのか。1月30日に出した「終息」宣言までの45日間にわたる、医療最前線の奮闘を振り返る。(岡田浩明)

 昨年12月。新型コロナの新規感染者が富士市内で相次いで判明していた。治療の最前線を担う基幹病院である富士市立中央病院にも、感染の足音が静かに忍び寄っていた。

 12月17日午後5時半。大部屋に別の病気で入院する患者が、新型コロナ陽性と判明した。即座に同じ一般病棟の入院患者43人、関係する医師や看護師ら111人の検査に着手したところ、患者7人、職員1人の陽性が確認された。全員の結果が判明したのは午後11時38分。感染者の感染症病棟への移送を終えると、日付をまたいで18日午前零時を過ぎていた。

 「明日からどうしようか…」。看護部長を兼任する伊藤すみ子副院長は、疲れ果てた様子でつぶやいた。感染者が発生した病棟の看護師のほぼ全員に当たる約20人が濃厚接触者として自宅待機になった。抜けたスタッフをどう補充するか。人繰りに頭を悩ませていた。「病院の一大事。明日行ける? 頼むね」。各病棟の看護長が、看護師に片っ端から電話して手配した。

 この日を境に医療現場は緊迫し、戦場と化していく。

■ ■ ■

 12月18日、病院は緊急措置として、入院患者と職員全員の検査実施とともに、新規入院患者の受け入れ制限、面会禁止などの措置に踏み切った。静岡県は県内50例目のクラスターと認定した。

 2日後、再検査で新たに入院患者14人の陽性が明らかになった。「富士市内でも市中感染の疑いによる新規感染者が増え始め、危険ではないかと思っていたところ、院内で感染者が出た。本当はもっと感染が広がっているかもしれない」。柏木秀幸院長の不安が的中してしまった。

 ただ、この事態は序章に過ぎなかった。12月17日に陽性が判明した患者が入院していたのは同月7日。10日が過ぎていた。入院から陽性判明までの間、「見えない敵」は静かに、そして急速に伝播(でんぱ)していた。実際、検査するたびに感染者が確認され、感染範囲も最初の感染者を確認した大部屋にとどまらず、病棟全体に広がっていた。

 「17日に陽性が判明した患者が新型コロナを院内に持ち込んだとは必ずしも断定できないが、少なくとも、その病棟にいた誰かがクラスターの引き金になっている。外から持ち込まれ、一定期間、院内で急速に広がったのは事実」。柏木院長はこう話す。

■ ■ ■

 感染の急拡大によって、病床も、看護師の補填(ほてん)も、限界に近づいていた。既存の感染症病棟は満杯状態に。クラスターが発生した一般病棟を臨時の感染症病棟に切り替えたエリアも約30人を収容し、明らかに逼迫(ひっぱく)していた。その最前線には自宅待機となった看護師の代わりに、別の一般病棟の看護師を次々に投入した。

 しかし、未知のウイルスが相手。マスクやゴーグル、ガウンの感染防護服に身を包みながらの不慣れな作業を強いられ、防護服の着脱方法など、感染症対応のルールも厳守しなくてはならない。

 しかも、入院時から担当する患者であれば顔色一つで細かい変調を読み取れるが、初対面同然。入院の原因となった疾患、治療歴や持病といった基礎的情報の把握に加え、新型コロナは容体が急変する事例も報告されており、緊張の連続だった。

 「私にできますかね。感染しませんか」。ロッカールームで不安を漏らし、涙ぐむ看護師ら。周囲は「大丈夫。頑張ろう」と励まして最前線に送り出すしかなかったが、普段ならできる動作が混乱して十分にできずに感染したケースもあり、濃厚接触者として自宅待機となった看護師が相次いだ。年の瀬の12月28日、感染者は70人を超えた。

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