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【ビブリオエッセー】幸福感に包まれる名画紀行 「美の旅人 フランスへ」伊集院静(小学館)

 著者は美術に造詣の深い名うての作家だ。1998年、「1枚の絵を探して」数年がかりでスペイン、フランスへと旅に出た。1枚の絵は“青い鳥”かもしれぬと気付くが、それでも続け、書き上げたのがこのフランス編だ。旅行エッセー風に30人以上の画家のひらめきや作風が丁寧に書かれており、在宅時間の長い今、私を豪華な旅に誘ってくれた。

 まずはルーヴル美術館。著者は心動かされた絵の前にたたずみ、対話する。夜の画家、ラ・トゥール。6メートル×9メートルの大作「ナポレオン1世の戴冠式」を誇示するダヴィッド。美しく静かな裸婦を数多く残したアングル。カラー写真をふんだんにはさみながら、作品の魅力、画家の人物像、交流関係を語る筆致はわかりやすく、専門家ぶったところがない。

 ルーヴルを出た旅はセーヌ河を下り、ジヴェルニー、ルーアンなど印象派が多く足跡を残した地を訪ね歩く。親切なのは、住居や町の情景について美術館にある絵画を振り返りながら語っていることだ。モネの大作「睡蓮」はオランジュリー美術館を飾っているが、彼が暮らしたジヴェルニーの庭園の美しさを重ねて読むと、色彩の輝き、光の変化が胸に迫り、幸福感に包まれる。

 そして旅は南仏へ。いまだ私の知らぬ土地だ。ゴッホが精神を病んだプロヴァンス、セザンヌが何度も描いたサント・ヴィクトワール山。コロナ禍がやめば一度は訪れたい。

 終盤、著者は素晴らしい言葉を贈ってくれた。「好きな絵画が名画」-。これだ! これならもう苦手な抽象画にたじろぐこともあるまい。自信をもって美術館へ行こう。

 大阪府箕面市 風遊子 74

 【ビブリオ・エッセー募集要項】本に関するエッセーを募集しています。応募作品のなかから、産経新聞スタッフが選定し、月~金曜日の夕刊1面に掲載しています。どうか「あなたの一冊」を教えてください。

 投稿はペンネーム可。600字程度で住所、氏名、年齢と電話番号を明記し、〒556-8661産経新聞「ビブリオエッセー」事務局まで。メールはbiblio@sankei.co.jp。題材となる本は流通している書籍に限り、絵本、漫画も含みます。採用の方のみ連絡、原稿は返却しません。二重投稿はお断りします。

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