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【書評】『産経新聞と朝日新聞』吉田信行著 「お祈り平和主義」を喝破

 朝日新聞はなぜこうまで日本人を貶(おとし)めたいのだろうか。

 そんな素朴な疑問を持つ人は多い。国家による慰安婦の「強制連行」なるものを創(つく)り上げて日韓関係を決定的に破壊し、福島第1原発事故では、所長命令に違反して所員の9割が逃げていた、と世界に誤った情報を流布…朝日が事実を無視して日本と日本人の名誉を傷つけてきた例を挙げ出すとキリがない。

 素朴、かつ根本的なその疑問に朝日と産経という二紙を比較しながら徹底解明を試みたのが本書だ。著者は産経で政治部記者、ソウル特派員や台北支局長として数々のスクープをものにした元論説委員長。新聞の表と裏を知り尽くすだけに読み進めるごとに「そうだったのか」と膝(ひざ)を打つ構成となっている。

 著者は〈朝日は日本という国家を、歴史的経緯からしても「強い国家」と見なして、弱体化させねばと考えているのに対し、産経は戦後の過程で「弱い国家」に転落していると見て、国家として強靱(きょうじん)化せねばとの危機感〉を持っていたと分析する。

 憲法九条改正に断固反対し、日の丸・君が代など不要で、周辺国家から脅威と見なされることはすべて除去するのが朝日の基本的な考え方だ。戦後の早い時期は「世界連邦」の構築を夢見たが、米ソ対立の冷戦で頓挫(とんざ)すると、やがて東アジアにおける共同体づくりに転換し、ひたすら日本の力を弱めるためにペンを振るってきたという。

 その東アジアの共同体構想もやがて大きな矛盾に直面する。中国という“モンスター”の出現である。自由を圧殺し、人権弾圧に邁進(まいしん)するこの異形(いぎょう)の大国が日本をのみ込み、衛星国にしかねなくなったのだ。〈東アジアに理想の共同体をつくり、恒久平和の実現を目指そうという美しい夢〉は、またも無残に打ち砕(くだ)かれたが、それでも朝日は〈世界の潮流の音に合わない平和の歌を虚(むな)しく歌い続けるしかない〉と著者は喝破(かっぱ)する。

 あらゆる方面から齟齬(そご)を来した朝日理論を“お祈り平和主義”と著者は名づける。そして〈お祈り平和主義は小中学生までとされたい〉と。

 朝日内部の具体的人名を挙げ社論の変遷をたどる筆致が次第にその歴史的な罪を炙(あぶ)り出す手法に、新聞人の矜持(きょうじ)が溢(あふ)れる。(産経新聞出版・1400円+税)

 評・門田隆将(作家、ジャーナリスト)

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