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【美村里江のミゴコロ】天才と普通のあいだ

 読者の皆さま、明けましておめでとうございます。元日付の産経新聞紙面に掲載された藤井聡太さんと芝野虎丸さんの対談、いかがだったでしょうか。

 年に何回か大喜びしてしまうような仕事があるが、今回の対談の進行役がまさにそう。どちらも将棋界、囲碁界のこの先を明るく照らす存在。次々と記録を塗り替えていくさまは素人から見ても壮観で、ニュースでお見かけする度に爽やかな気持ちになっていた。

 「ぜひお二人のやりとりを間近で聞き、質問をしてみたい」と、依頼は即答でお引き受けした。ただ、同時に「私でお役に立てるだろうか」という不安もあった。何しろ将棋も囲碁も漫画の世界と撮影でしか触れていない。

 すぐに掌握できるジャンルではないことは重々承知しつつ、こんなときは愚直に勉強するしかない。頂戴した資料を皮切りに、初心者向けの書籍を5冊読んだ後、過去のインタビュー記事や動画で計50時間ほど没頭した。

 とはいえ、一局全部を見ると10時間ほどあるので連続再生は難しく、分割で見て3時間が限界だった。人間の集中力については諸説あるが、この長時間、どうやって圧倒的精度の思考をキープしているのか気になった。

 また「将棋棋士の『直観思考』を科学、修練は新たな直観回路を作る」という理化学研究所や富士通などの研究報告(平成20年)によると、プロ棋士では駒組の定跡形とデタラメ形を0・1秒で識別する脳波活動を観測したということだ。

 知れば知るほど、お二人の脳内はどうなっているのか、ますます気になって当日を迎えた。

 しかし、実際にお伺いしてみると意外な回答があった。お二人とも、一時的な不調による揺らぎや、対局の影響で寝つかれない夜もあり、「ごく普通の不安」を抱えているそうなのだ。それを超えて、藤井さんは18歳、芝野さんは21歳であのような成績を達成されている…。

 こうなると今度は自制心の強さに興味津々。時間切れで聞ききれなかったが、終えた後、担当者の方と話していて「いかなる天才でも、あの年齢で自分の内面を百パーセント表現できる人はいないでしょう」という言葉に納得した。

 お二人が年を経れば、内面の秘密について伺えることがあるかもしれない。そんな日を楽しみに、さらなるご活躍を願っている。

【プロフィル】美村里江(みむら・りえ) 昭和59年、埼玉県出身。女優としてドラマや映画に多数出演する一方、エッセイストとしても活動。平成30年に「ミムラ」から改名。著書に『たん・たんか・たん』(青土社)など。

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