PR

ライフ ライフ

【朝晴れエッセー】祖母と朝餉(あさげ)・1月7日

 「早起きは三文の徳、朝の果物は金の卵、朝茶はその日の難のがれ」。明治生まれの祖母がよく口にしていた言葉だ。

 毎日しっかりと朝餉をとるためには、早寝早起きの規則正しい生活を送る必要がある。祖母の言葉は、食によって健康な毎日を過ごすための教えであったのだと、今改めて思う。

 カシャカシャと鰹節(かつおぶし)を削り、ガリガリと大根をおろし、サクサクと葱を刻む。祖母は毎日黙々と朝餉の支度と向き合う。削りたての鰹節の芳香が胃袋を刺激し、一汁一菜に近い献立なのにご飯が進む。

 食後はみかんやリンゴと緑茶を楽しんでから出かける。当時家族全員で囲んだありふれた朝餉が、今ではとてもぜいたくに思える。

 祖母亡き後、あの香り高い削り節は顆粒(かりゅう)のだしに代わったものの、祖母の志はしっかりと母に引き継がれ、家族の朝餉は続いた。

 家を出て独り暮らしを始めた後も、ご飯はパンに、リンゴはバナナに、緑茶はコーヒーへと姿を変えつつも朝餉は欠かさず、今の細君も家族で食卓を囲むことを好んで娘たちを育てた。

 たかが朝餉、されど朝餉。家族が顔をそろえる朝餉で全員がパワーを共有していた。娘たちが家を離れ、独り夜明け前の時間を楽しむようになり、細君のコーヒーを用意した後は猫たちと朝餉を囲んでいる。

 彼らの食欲を目の当たりにすると、生きることは食べることであると、祖母の教えが改めて心に響くのである。

伊藤彰彦 61 神奈川県藤沢市

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ