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コロナ禍の生きた証しに 詩人・野村喜和夫さんが新作『花冠日乗』

 詩の底流には生存を脅かすコロナ禍での不安と焦燥、奇妙な浮遊感が色濃くある。〈もう葉桜だ/すべてが止まってしまったような/先が見通せない不安の現在/だけが突出しているような、奇妙な時間の宙吊りのなかで/生きるか死ぬかです/私たち〉。旧約聖書、ランボー、萩原朔太郎、そしてシベリア抑留体験を書き続けた石原吉郎…。先人の言葉を織り込みつつ、不安のもとであり、考えようでは未来の希望にも転じるこの現在の〈不確実性〉を凝視する。

 「俯瞰(ふかん)的な立場で『今はこうだ』と状況論をぶつ方法もある。でも…」と続ける。「詩の意味はそこにはない。より地上に近いレベルで何を感じ、それをいかに言語化するかだと思うんです。揺らぎ、迷うことが生きることであって、おろおろ歩くだけでいい。この時代に居合わせた詩人としてコロナ危機を生きたという証しを残したかった」

 近年海外でも自作の翻訳紹介が進み、2012(平成24)年に英訳選詩集で米国の詩の賞を受賞。昨年10月には詩集『ヌードな日』が新たに英訳出版された。 「紙と鉛筆があり、言葉を配列していけばちょっとした宇宙が誕生する」。そんな詩作の喜びを味わうために言葉を積み上げる。

(海老沢類)

 のむら・きわお 昭和26年、埼玉県出身。早稲田大第一文学部卒。『特性のない陽のもとに』で歴程新鋭賞、『風の配分』で高見順賞、『ニューインスピレーション』で現代詩花椿賞、『薄明のサウダージ』で現代詩人賞など受賞歴多数。

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