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コロナ禍の生きた証しに 詩人・野村喜和夫さんが新作『花冠日乗』

「歩いていると詩のフレーズが浮かんでくる。これは僕の癖かもしれない」と話す詩人の野村喜和夫さん
「歩いていると詩のフレーズが浮かんでくる。これは僕の癖かもしれない」と話す詩人の野村喜和夫さん

 収束の見えないコロナ禍に向き合う人々の心象風景が世界中で日々紡がれている。戦後世代を代表する詩人の一人、野村喜和夫さん(69)の新刊『花冠日乗(かかんにちじょう)』(白水社)もそんな詩集だ。感染拡大のさなかに散歩を続ける詩人の目に映った非日常が、しなやかで喚起力のある言葉で記録されている。

 「ウイルスへの恐怖や不安を紛らわそうと毎日のように散歩していたんです。世田谷区の自宅から渋谷まで行っても人通りがない。珍しい光景で、人類が滅亡した『人間以後の世界』を感じ取る気分だった」

 小島ケイタニーラブさんの音楽、朝岡英輔さんの写真とのコラボレーションで織りなされた『花冠日乗』は、昨年4月の緊急事態宣言発令から解除へと至る日々の野村さんの思索の記録だ。太陽の光冠という意味があるコロナを、ウイルスの脅威を想起させる〈毒のある花冠〉と言い換え、さまざまな情景を刻んでいる。

 響き合い、連鎖する「青」のイメージが印象深い。テレビに映し出された青く縁取られたコロナウイルスが頭から拭えない詩人は、散歩中に川べりで青い花ネモフィラを見つける。別の日には静謐な青い空をじっと眺める。夕刻には医療従事者への感謝のしるしである青くライトアップされた都庁舎が目に入ってくる。「青は天空の色で地上では見つけにくい。遠いところにあって手が届きにくい超越的なもの。そのありがたい色をコロナから奪還する、という想像力の動きがあった気がする」

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