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【朝晴れエッセー】コアラと呼ばれて・12月25日

 最初にそれを指摘したのは、大学の同級生だった。「みゆきちゃん、コアラに似てる」と。コアラといえば昼寝三昧のイメージだったので、即座に不満を表明した。

 2度目は卒業式後の謝恩会。ゼミの教授が、卒業生一人一人に卒論の感想やはなむけの言葉をかける。教授は、緊張しつつお言葉を待つ私の顔をじっと見つめ、一言。

 「う~ん、君はコアラに似ているねえ」

 その後、就職先で立て続けに2人から指摘され、ジワジワと自覚し始めた。

 名古屋の動物園で実物と対面した。悠長にユーカリを食べ、木の股にだらんと座って眠る。そのとぼけた顔と風体が他人(?)とは思えず、「まあいいか」と観念した。

 開き直って、時折コアラ似説を話のネタにしていたら、いたく納得した友達から、コアラと呼ばれるようになった。

 ある冬、友達数人とスキーに行った。まだ初心者レベルの私は、マイペースでノロノロと滑っていた。すると、上空を渡るリフトから、友達2人の声が。

 「あーっ。あそこにコアラがいるよ」 「えーっ、どこどこ? あっ、ほんとだ。おーい、コアラ~」

 周辺のスキー客たちは「えっ? 一体何? コアラ? どこに?」という風情でざわつき始めた。

 私は聞こえないふりを装い、細心の注意を払って滑り続けた。ここで転ぼうものなら、「あっ、コアラが転んでる」と指摘され、周囲に気づかれる危険がある。

 慎重に八の字ボーゲンで停止し、まぶしいゲレンデにみとれるふりをする私の頭上、コアラを呼ぶ声がしばらく響いていた。

渡部みゆき 59 松山市

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