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【朝晴れエッセー】11月月間賞 もしかしてコロナ? 一瀬靖子さん

11月月間賞の選考を行う選考委員の門井慶喜さん(左)と玉岡かおるさん=大阪市浪速区(鳥越瑞絵撮影)
11月月間賞の選考を行う選考委員の門井慶喜さん(左)と玉岡かおるさん=大阪市浪速区(鳥越瑞絵撮影)

 朝晴れエッセーの11月月間賞に、一瀬靖子(のぶこ)さん(91)=東京都小金井市=の「もしかしてコロナ?」が選ばれた。ある日、倦怠(けんたい)感と38度以上の発熱に見舞われた高齢の作者。だれもが抱く不安な気持ちを、ユーモアを交えながらつづった高い文章力などが評価された。選考委員は作家の玉岡かおるさんと門井慶喜さん、山田智章・産経新聞大阪文化部長。

 ≪受賞作≫

■もしかしてコロナ? 一瀬靖子(のぶこ)さん(91) 東京都小金井市

 つるべ落としの暮れ方、けだるさに着のみ着のままベッドにもぐってしまった。

 恐る恐るみつめた体温計は38度を軽く超え、思い当たるふしはないはずなのに、追い払おうとしてもコロナの3文字がまといつく。

 近くに住む娘からの安否確認電話の答えも、いつもの茶目っ気は消えうせ「ネツデタ」と低音でひとこと。あっと言う間に息子が勤務する遠方の病院に入院が決まった。

 次の日、大学生の外孫がハンドルをとり、娘の付き添いで出発。大好きな東北道もうずくまったまま不安と緊張を乗せ北へとひた走る。

 「あ!今日は今の私と同年で世を去った母の命日、しかも仏滅!」。暗いかげをふり切り、「お母さん助けて」と気丈な明治の人だった母に祈る。

 雪を頂く日も近い山並みを望む院庭に到着。防護服の息子が目に入り、体の力が抜け、PCR検査、採血と点滴もありがたく「俎上の魚」となった。

 どれ位の時が過ぎたろうか。「よかったですね、コロナじゃなくて」。天使の晴れやかな声。車椅子は飛ぶように病室へ向かい尿路感染症と診断され深い眠りに入る。

 翌晩、息子が花火を見ようと誘いにきた。院庭でのコロナ撲滅祈願花火だ。夜空中に弾け散る花々のエネルギッシュな美しさ、轟(とどろ)き渡るひびきに、私は母の励ましをしっかり感じとった。

 点滴をお供に、還暦の息子に支えられて見た花火は90代のエールとなった。これからもまわりのすべてに感謝して生き抜きたい。

 私が元気なうちにコロナ禍がおさまりますように。

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