コロナ禍で経営難… 東武動物公園へ鶏肉寄付 山形の食肉会社、広がる「善意のリレー」
新型コロナウイルス感染拡大に伴う入園者減少で動物の餌代の確保に苦慮している東武動物公園(埼玉県宮代町)を支援しようと、山形県の食肉会社がブランド鶏「山形さくらんぼ鶏」を餌として提供している。この取り組みに感銘を受けた人たちが、会社の心意気を応援しようと鶏肉を注文するケースも相次ぎ、「善意のリレー」が広がっている。
東武動物公園は遊園地や動物園が組み合わさった複合レジャー施設で、年間約130万人が訪れる。しかし今年は、春休みや4~5月の大型連休を含む約3カ月間の休園を強いられた。
そこに重くのしかかったのが動物の餌代だ。園内では、ライオンやゾウなど約120種、約1200頭の動物を飼育しており、客が入らなくても年間約4500万円が餌代として支出される。
こうした窮状が報道などを通じて伝わり、山形県新庄市の食肉会社「オールクリエーション山形支店」では、「同じ動物を扱う事業者として何か協力できないか」という声が従業員の間で沸き起こった。
餌の寄付を申し出たところ、園側にも歓迎され、今年9月から、月当たり鶏肉約330キロ(ガラ約250キロ、ささみ約80キロ)を提供している。来年3月まで続ける予定だ。
山形さくらんぼ鶏は、山形県産のさくらんぼ果汁を飲んで育っており、ふっくらとしたジューシーな肉質が特徴という。東武動物公園動物園事業部の大西秀弘課長(49)は「とにかく新鮮で、食いつきがとてもいいので助かっている。動物たちも寄付に感謝しているのではないか」と話す。
食肉会社側にとっては予期せぬPR効果もあった。鶏肉を寄付していることを知った人たちから「感動した」「食べてみたくなった」などのメッセージとともに注文が相次ぐようになったのだ。柴崎紀明副支店長(42)は「思いがけない幸いだ。動物も人間もコロナを乗り切っていくことができれば」と期待を込めた。
(竹之内秀介)