PR

ライフ ライフ

【ビブリオエッセー】ガレージの奥で「彼」は… 「肩胛骨は翼のなごり」デイヴィッド・アーモンド著 山田順子訳(創元推理文庫) 

 高校生の頃、ひどく痩せていて、私は大人たちによく心配された。どれだけ食べても思うように脂肪がつかず体重も増えなかった。「羨ましい」と言う友人もいたが「ガリガリ」と揶揄されることも多く、そのたびに自分が病気なのではと不安になったのをよく覚えている。

 体形は変わらぬまま数年経ったある日、何気なく入った書店で『肩胛骨は翼のなごり』を見つけた。変わったタイトルに聞き覚えはあったが内容は知らない。なぜか読みたくなった。

 主人公のマイケルはサッカー好きの少年。引っ越しをしたばかりの新しい家にある崩れ落ちそうな古いガレージが気になり、懐中電灯を手に中を探っていて、「彼」を見つけた。

 顔はやせ衰え、蒼白く、髪や肩にはアオバエの死骸が散らばっている。黒いスーツに身を包み、背が高く、背中にこぶがあった。驚いて心臓が激しく脈打つマイケルを見つめ、「なにが望みだ?」と「彼」は聞いた。

 どこか人間離れした不可思議な存在である「彼」は「スケリグ」と名乗った。そして隣家の風変わりな少女ミナとの出会いがあり、重い病の妹がいる…。友人や家族との交流を通して少年が成長する話だが、個性豊かな登場人物と主人公のやり取りには思わず吹き出しそうになり、思いがけない展開は飽きさせない。

 スケリグとは何者なのか。読者の想像力をかきたてる表現。知りたい気持ちは高まるが著者はすべてを語らない。そこもまた魅力だ。

 文中、マイケルは頻りに人間の肩胛骨は何のためにあるのかを尋ねる。私は浮き出た自分の肩胛骨を指でなぞりながら、人間が天使だったときの翼のなごりであればいいなと思った。嫌いだった自分の体が少し好きになった。

 滋賀県草津市 浦上ゆり 23

 【ビブリオ・エッセー募集要項】本に関するエッセーを募集しています。応募作品のなかから、産経新聞スタッフが選定し、月~土曜日の夕刊1面に掲載しています。どうか「あなたの一冊」を教えてください。

 投稿はペンネーム可。600字程度で住所、氏名、年齢と電話番号を明記し、〒556-8661産経新聞「ビブリオエッセー」事務局まで。メールはbiblio@sankei.co.jp。題材となる本は流通している書籍に限り、絵本、漫画も含みます。採用の方のみ連絡、原稿は返却しません。二重投稿はお断りします。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ