PR

ライフ ライフ

【はやぶさ2の舞台裏】(上)「リュウグウの牙」 自己成長力でかいくぐる

リュウグウへの最初の着地に成功し、管制室内で成功祈願のだるまに目を入れる責任者の津田雄一さん(左)ら=2019年2月22日、相模原市(JAXA提供)
リュウグウへの最初の着地に成功し、管制室内で成功祈願のだるまに目を入れる責任者の津田雄一さん(左)ら=2019年2月22日、相模原市(JAXA提供)
その他の写真を見る(1/2枚)

 「リュウグウが牙をむいた」

 探査機はやぶさ2が間近で撮影した小惑星リュウグウの写真を見て、チームの責任者を務める宇宙航空研究開発機構(JAXA)の津田雄一(45)は衝撃を受けた。平らな砂地が広がる穏やかな地形だと思っていたのに、無数の岩石が地表を覆っていたからだ。

 このままでは危なくて、とても着地できない。平成26年末に地球を出発してから3年半。順調に進んでいたプロジェクトは想定外の事態で暗転した。

 はやぶさ2は太陽電池パネルを広げた幅が約6メートルで、底部からは長さ約1メートルの筒状の試料採取装置が下に伸びている。半径3メートルの範囲に高さ65センチ以上の岩がない場所を見つけないと、安全に着地できない。

■数万個の岩を全て解析

 白羽の矢が立ったのは東京大准教授の諸田智克(44)だった。「えらいことになった。だが、ここが腕の見せ所だ」。惑星の画像解析が専門の諸田は、地表にある数万個の岩の高さを、影の長さと太陽の位置関係から全て割り出す膨大な作業に取りかかった。

 休日返上で夜明け近くまで解析に取り組む日々が続いた。妻から「毎日何をやっているの」とあきれられ、6歳の一人娘は「パパが遊んでくれない」と寂しがった。

 約1カ月後。全ての岩の高さが分かる地図を完成させ、着地可能な場所がついに見つかった。しかし、そこはまさに最低条件の半径3メートルしかない「猫の額」だった。機体は設計上、着地する場所の誤差が約50メートルも出てしまう。これではとても歯が立たない。

 津田は「甲子園球場のどこかに降りればよかったのが、マウンドに降りなければならなくなった」と頭を抱えた。だが、決して諦めなかった。

 チーム内で数多くのアイデアを出し合い、地表に投下した球形の目印をカメラで捉え、位置を正確に把握しながら降下する方法を考案した。必要なコンピュータープログラムも地球から新たに送信するなどして、本来の能力をはるかに超えた誤差1メートルという桁違いの精度を引き出し、着地に成功。日本の科学技術が、数十億キロのかなたにある小さな星に届いた瞬間だった。

続きを読む

関連トピックス

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ