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【ビブリオエッセー】逆境乗り越え、大輪の花 「水のように」浪花千栄子(朝日新聞出版)

 見たことのある書名に、「うわっ、この本」と思わず口走ってしまいました。書店に並んでいたのは真新しい『水のように』。帯には女優、浪花千栄子の「唯一の著書にして自伝」とあります。実は一昨年、梅田の古書店で偶然手に入れたのが、昭和40年に六芸書房から出版された同じ本でした。装丁や開いたページは黄色く変色し、これは掘り出しものと感じたものです。ところが今回、浪花千栄子がモデルのテレビドラマが始まるのに合わせ、別の出版社から復刊。驚きました。

 この本には南河内の貧しい家に生まれ、9歳で奉公に出された厳しい少女時代から、芝居に目覚め、出会いに恵まれ、女優として成功するまでの生涯が語られています。大阪は道頓堀の芝居文化が全盛で邦画も人気の娯楽。そんな時代に舞台から映画出演、そして喜劇の世界へ。私生活では渋谷天外との結婚と離婚、まるで花登筐のドラマさながらの世界です。

 たくましく生きた姿が老若男女を問わず、あらゆる層に愛されたのだと思います。その活躍がミヤコ蝶々や森光子ら後進にも影響を与えたのではないでしょうか。関西弁の語りは絶品で役者のお手本だったそうです。

 私は映画でしか知らない女優ですが、その魅力を熱心に語るのが私の母。往年の大ファンです。そこで去年の母の日、アメ村で見つけたオロナインH軟膏の古い看板をプレゼントしたのです。そこに写る浪花さんは本名が南口(なんこう)キクノ。軟膏の宣伝にぴったりでした。母はそれを飾らず、自室の押し入れへ大切に隠したまま。

 長谷川一夫や溝口健二、京マチ子ら一流の人々との交流も魅力の一冊です。大阪は都構想も一段落ですが、ここは先を急がず、過去の大阪の魅力を改めて学んでみてはどうでしょう。

 大阪市此花区 富●(=さんずいにウかんむりに眉の目が貝)充治 48

 【ビブリオ・エッセー募集要項】本に関するエッセーを募集しています。応募作品のなかから、産経新聞スタッフが選定し、月~土曜日の夕刊1面に掲載しています。どうか「あなたの一冊」を教えてください。

 投稿はペンネーム可。600字程度で住所、氏名、年齢と電話番号を明記し、〒556-8661産経新聞「ビブリオエッセー」事務局まで。メールはbiblio@sankei.co.jp。題材となる本は流通している書籍に限り、絵本、漫画も含みます。採用の方のみ連絡、原稿は返却しません。二重投稿はお断りします。

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