PR

ライフ ライフ

【朝晴れエッセー】日記帳・11月18日

 4年前、私が海外勤務に旅立つ前日に、最愛の祖父が倒れた。救急車で病院まで付き添い、祖父の意識が戻ったのを確認した私は、予定通り海外へ渡った。

 その後祖父は入退院を繰り返し、1カ月後に天国に行ってしまった。

 生まれたときから同居していた祖父は、少し厳しく、真面目で、寡黙な人であった。あんなにお世話になった祖父を看取れなかったことが申し訳なく、何日も塞ぎ込んだ。

 そんな私に、電話越しの母が言った。

 「おじいちゃんは幸せだったと思うよ」

 そんなの本人に聞かなきゃわからない。最後に直接会って話したかったと何度も後悔し、やり切れない思いが残った。

 日本に帰国後、祖父の遺品を整理することになった。そこに残されていたのは、何十冊にも及ぶ日記帳であった。新聞記者をしていた祖父は、なんでも記録に残すのが日課だったのだ。

 日記の中には、日々の何げない日常が記されていた。食べたもの、医者との会話、読んだ本。そして、そこには私たち家族が頻繁に登場した。

 私が大学に合格したこと。海外に行くこと。兄の就職が決まったこと。メモ程度の短文ではあるが、そこには私たち孫を心配し、見守る祖父の愛情が記されていた。姉の婚約相手を皮肉った言葉が書かれていたときには、思わず泣き笑いしてしまった。

 決して多くを語らない祖父であったが、私たち家族を大切に思ってくれていたことは間違いないだろう。日記を読んだとき、そう確信することができた。

 4人の孫との同居は、さぞかし騒がしかっただろう。おじいちゃん。天国で大好きな日本酒を飲んで、ゆっくりくつろいでいるだろうか。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ