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【日本語メモ】記事の「さわり」は何ですか

校閲部
校閲部

 一日の仕事を終え、帰宅時に乗り込むバスは空気が重く、冷たく感じられます。青白い車内灯と自分の疲労のせいでしょうか。しかし、先日の帰りのバスは違いました。男性運転手が、停留所に止まる度に「今日も一日大変お疲れさまでした。お気を付けてお帰りください」とアナウンスするのです。丁寧な日本語は温かいと、しみじみ思いました。

(1)この問題は対処療法では解決しない。

 「対症療法」は「患者の症状に対応して行う療法~」(広辞苑)。「療法」は「治療の方法」。転じて「根本的な解決にならない当面の方策の意」(同)に用います。一方、「対処」は「あるものや情勢に対して、適当な処置をすること」(同)。「対処」と「療法」のそれぞれの言葉の意味を考えると、2つの言葉はつながらないようにみえます。「対処法」という語句もあり、「対症」と「対処」は読み方、語感が似ているので、誤って用いる可能性が出てきます。よく似た言葉なので混同しますが、意味が違いますね。

(正解例)この問題は対症療法では解決しない。

(2)天皇、皇后両陛下は馬にニンジンをあげ、顔をなでられた。

 「あげる」「さしあげる」は謙譲語になります。謙譲語は、話し手がその話題の中で行為の向けられる相手を敬う言い方。この例文では、皇室の方が馬にへりくだったように受け取られかねません。本来は「やる」ですが、「与える」と表現をやわらかくしました。ちなみに、産経ハンドブックでは、皇室に対しては敬語を使うこととしています。謙譲語は敬語の一分類ですが、主体そのものへの敬意を表していないので、例文の「あげる」は両陛下への敬語表現には当たりません。「なでる」に、尊敬語の「られる」を付けることで、敬語表現となっています。

 例文と同様に「子供におやつをあげる」「植木に水をあげる」もあまり適切ではありません。産経ハンドブックでは、目下(めした)の者や動植物に対して用いると違和感があるとしています。「やる」あるいは「与える」に直します。

(正解例)天皇、皇后両陛下は馬にニンジンを与え、顔をなでられた。

(3)講演のさわりを聞いて会場を出た。

 「さわり」はもともと義太夫節から派生した言葉です。転じて「邦楽の各曲中の最大の聞かせ所~」(広辞苑)。さらに意味が変わり、「一般的に話や物語などの要点、または、最も興味を引く部分~」(同)として現在は使われます。「さわり」は本来、クライマックスを指す言葉ですが、平成28年度の「国語に関する世論調査」では、この「さわり」を本来の「話などの要点のこと」と解釈している人が36.1%、「話などの最初の部分のこと」と思っている人が53.3%。誤用が広まっています。例文では、「最初の部分」として使っているとみられるので、「冒頭」と直しています。

(正解例)講演の冒頭を聞いて会場を出た。

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