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囲碁界、逸材・一力碁聖に異例の引き留め懇願 そのワケは?

第45期碁聖就位式で、一力遼碁聖(右)は授与された允許(いんきょ)状を披露した
第45期碁聖就位式で、一力遼碁聖(右)は授与された允許(いんきょ)状を披露した

 今夏に初の七大タイトルの一つを奪取した一力遼碁聖(23)が、2冠に向け井山裕太四冠(31)との天元戦五番勝負に挑んでいる。第2局を終えて1勝1敗。シリーズの流れを左右する第3局が27日に控える。棋士の一力碁聖は今春、仙台市に本社がある河北新報社に入った記者でもある。そんな二刀流の逸材をめぐり、囲碁界と新聞社が“綱引き”を繰り広げている。(文化部 伊藤洋一)

「もう少し囲碁界に…」

 プロ10年目の今年8月、一力は“平成四天王”の一人に数えられる前碁聖の羽根直樹九段(44)を3連勝で破り、初めて七大タイトルを獲得した。その就位式が10月16日に東京都内のホテルで開かれた。

 例年、関係者やファンを招待して華やかに優勝者を祝う囲碁の就位式だが、今年は新型コロナウイルスの影響を受け軒並み、規模を縮小していた。それだけに、報道陣以外に約50人が集まった碁聖就位式は、久々に活気があるなかでの開催。しかし関係者の祝福する声は、どうも歯切れが悪い。

 「(持ち時間の短い)早碁では勝ちまくる王様。なぜか七大タイトルには届かなかったが、最初に取るのは碁聖と決めていたのかもしれません」と切り出したのは日本棋院の小林覚理事長。続けて「すごく成長し強くなっている。ゆくゆくは世界チャンピオンになって、囲碁界を盛り上げてくれる。日本棋院の宝なので、もう少し囲碁界に置いておいてもらえたら…」と、なにやら懇願口調だ。

 さらに師匠の宋光復九段は「小学2年で門下生になった時、お母さんに“20歳までに七大タイトルを取るでしょう”と伝えました。3年ほどずれましたが…」と笑わせたあと「心配ごとばかり、これからも二足のわらじを履き続けるんでしょうか? 大変だと思う。応援していただければ」と話した。

直撃に父親は…

 言葉が向けられた先は招待客席。この日は碁聖戦を主催する新聞囲碁連盟の加盟社の一員として、さらに家族として、父の一力雅彦・河北新報社社長(60)が出席していたのだ。

 一力碁聖の高祖父は、明治30年に同社を創業した健治郎氏。祖父は社長・会長を歴任した一夫氏で、日本相撲協会の横綱審議委員長も務めた。その系譜のため一力碁聖が将来、同社を率いるのは既定路線とされている。

 かつて囲碁界では、学業は必要ない-との考えが支配的で実際、井山四冠や芝野虎丸十段(20)らトップ棋士の多くは、高校に進学していない。そのなかで一力碁聖が今春、早稲田大学社会科学部を卒業したのは記者として、さらに将来の経営者として学歴があったほうがいいと判断したため、とされる。

 東京支社編集局に籍を置く一力記者の上司で、父の雅彦氏を式後、直撃した。

 プロ10年目でのタイトル獲得は早い、遅い?

 「早いも遅いもわかりません。獲得したことが素晴らしい。うれしいの一言。(第1局に)先勝したのがよかったかな」

 棋士として、記者として何点?

 「点数なんかつけられません。棋士として無限の挑戦をしているところ。記者としてはまだ研修の身ですよ。点数(つけること)がお好きですけど、まだまだですよ」

 将来はどういう方向に?

 「まだ何も決まってませんよ。いまは囲碁中心です。新聞人としても一歩一歩経験積んで…。生活しながら新聞のこと、囲碁のことを考えていってほしい。ただ本人が(新聞社に入社するという)布石を打った。今は囲碁に集中。どちらも頑張ってほしい」 

社長就任までにタイトル量産?

 囲碁界関係者によると、「一力さんはいずれ社を継がなければならないから、早いうちにタイトルを獲得するなど活躍しておきたいとの思いは強く持っているよう」と話す。

 「碁聖が初タイトルになったのは、運命的なものを感じる。(今後は)国内戦、国際戦も精いっぱい戦っていきたい」とあいさつした一力碁聖。

 雅彦社長は47歳の平成19年に社長に就任している。前例にならえば、一力碁聖が囲碁に専念できるのは、あと20年前後となる。それまでにいくつ、タイトルを上積みできるか…。

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