【朝晴れエッセー】頼りになるのはだあれ?・10月23日
人生最大の危機と言っても過言ではないほどの体調不良に見舞われた。
突然自宅がひっくり返っているかのような激しいめまいと吐き気に襲われた。自力では寝室にさえ行けず家族に支えられて何とかベッドにもぐった。
丸一日、起き上がることも物を口にすることもできず、ひたすら回転のなかで苦しみ続けた。
翌日、少しは動けるようになり、夫の運転で病院へ連れて行ってもらった。車中では完全にリクライニングにしてアイマスクをつけて揺れに耐えた。
病院にたどり着いたものの自力では受付もできないので待合のいすに突っ伏して、夫に問診票を代筆してもらったのだが、ここで思わぬ衝撃を受けることになった。
問診項目を上から順に読み上げ、私の答えをそのまま書き込む夫は問診通り、「年齢は?」「誕生日は?」と聞いてきた。答えながら腹立たしく心でつぶやいた。
「知らんのかいっ!」
もしこれで次に「名前は?」と聞かれでもしたら、夫婦も終わりだな、と半ば本気で思っていたが、さすがにそれは聞かれることはなかった。
家では子供たちが買い物から食事作り、洗濯まで見事な連携プレーで滞りなく家事を回してくれていたので何の支障もなかった。
そしてつくづく思った。ピンチのときに頼りになるのはわが家では夫ではなく、子供たちであると。
村尾明子 51 大阪府八尾市